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キス[遙か3、アンジェ]
テーマ【キス】
平敦盛(遙か3)、セイラン(アンジェ)。



<平 敦盛>

朔と市に行ったら敦盛さんの好きそうな綺麗な音色の鈴を見つけた。

根付けとしても使えるし、値段も手頃だったから購入する事にした。

朔に勧められて、こっそりお揃いで。

邸に帰ってから今日も屋根の上にいるであろう敦盛さんを呼ぶ為に私は廊下を少し早足で歩く。


「敦盛さーん!」


屋根にいるだろうと思ってる私の視線は当然、上を向いていて


「ライラ、私に何か…っ!」


前方から出てきた敦盛さんに気付くのが遅れ、体当たりしてしまった。


「「……………。」」


お互い無言。辺りを静寂が包む。

上を向いてやや背伸びをした私と
立ち上がり様に顔を出した少し屈んだ状態の敦盛さん。

その二人がぶつかったのだから想像はつくだろう。


「…っ、その…す、すまないっ。」

「い、いえっ…私の方こそ体当たり……しちゃって…。」

「い、いや、ライラは悪くない。」

「あ、敦盛さんも悪くないですっ。
それに嫌じゃなかった…です、し…。」


そこまで言って私は顔を真っ赤にして俯く。

敦盛さんも私に負けずと顔を赤くして、二人の間に沈黙が流れる。

その時にリンっと綺麗な音が聞こえる。

私は『あっ!』と本来の目的を思い出して、赤い顔のまま敦盛さんに鈴を差し出す。


「? 鈴…?」

「はい。あの…さっきまで朔と市に行ってて、そこで見つけたんです。
綺麗な音色だし、敦盛さん、こういうの好きかなって思って…。」

「もしかして、私に…か?」


驚いたように目を瞬かせながら聞く敦盛さんに私はコクンと頷く。


「ありがとう、ライラ。…綺麗な音色だな。」


私から鈴を受け取って微笑む敦盛さんを見て私の頬も緩む。

すると不意に敦盛さんが私の足元を見て首を傾げる。


「…ライラ、それは…?」

「え? あ、これは…!」

私の足元にはもう一つの、敦盛さんの鈴とお揃いの鈴。


「え、えっと…私も気に入って……敦盛さんとお揃いがほしいなって…。」


敦盛さんが真っ直ぐ私を見つめるから、誤魔化すつもりが本音を言ってしまった。


「…そうか。」


一言呟いた敦盛さんの声色が凄く優しくて……俯いていた顔を上げて見れば穏やかに微笑む敦盛さん。


「私もライラとお揃いで嬉しい、ありがとう。
それと…その……さっきのは私も…嫌ではなかった。」

「え、あ…はい。」


また二人して顔を赤くし俯いて
ちらりと相手を見て視線がぶつかれば、照れたように微笑みあった。

ぶつかって口付けをした、なんて漫画みたいな話だけど

ゆっくり過ぎる二人の恋には、こんなハプニングもちょうど良いかもしれないね。






<セイラン>

…何しに来たんだい?

別に怒ってなどいないさ。
第一、僕がどうしようが君には関係ないだろう?

……悪かったよ。
だから、そんな悲しそうな顔はしないでくれないかい。

僕とした事がつまらない嫉妬なんかで君を悲しませてしまったみたいだね。

可笑しいだろう? この僕が嫉妬なんて。

君と会うまで自分がこんなに独占欲が強いなんて知らなかったよ。

ただ君が僕以外の男と楽しげに歩いていただけで、この有様さ。

僕がこんなになったのは君のせいなんだ。
責任をとってくれるかい?

ふふ、その可憐な紅い唇で証明してみせてごらん。
君の照れた顔を見れるのは僕だけの特権だからね。

もう離さない。覚悟はいいかい?
愛してる、唯一人、僕だけの天使。




2007.12.2.初出
2020.4.19.再掲載

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あきゅろす。
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