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stage0 面影[ギアス]
ナナリーが追い求めるのは大好きな姉の面影――。
特殊能力持ちで文武両道な鬼籍の第四皇女設定。
ヒロインは生きていてルルーシュ達を見守っていた。
そんなヒロインとルルーシュの初接触。




私には何の力もなくて

いつもお兄様たちに守られてばかりですけど

守りたいと思うんです、ライラお姉様の心を。


ライラお姉様が私とお兄様を守る為に自分自身を盾にした事も

両親を殺されたのは自分のせいだと自身を責め続けている事も

特別すぎる存在故に孤独を抱えている事も

私は知っているから。


ただ幸せになってほしいんです。


けれど、日本がエリア11と呼ばれ始めたあの日から

ライラお姉様の行方は誰にもわからない……。


だから、私はずっと追い求め続けてる

大好きなライラお姉様の面影を――。










「ルルーシュさん、これ先生から渡してくれと頼まれていたものです。」


ルルーシュがリヴァルと歩いていると一人の女生徒から話し掛けられた。


「っ!
あ……、ああ、ありがとう。」


プリントを渡す女生徒を見てルルーシュは珍しく動揺する。


(似てる、ライラと。偶然…か?)


「それでは、失礼します。」


用件を済ますと一礼して立ち去る女生徒の後ろ姿を呆然と見つめるルルーシュ。


「何してんだ、ルルーシュ?
そんなに見つめて? 何、惚れちゃったとか?」


ルルーシュをからかうようにリヴァルがルルーシュの肩に手を乗せながら言う。


「いや、ただ声とか雰囲気が似てるなと思って。」

「似てるって誰と?」

「ん? ああ、いや何でもない。ただの勘違いだ。」


(そうだ、勘違いだ。ライラがここにいる筈がない。
少し声が似てる、それだけだ。)


ハッと我に返ったルルーシュは自分に言い聞かせるようにそう考え、誤魔化すようにリヴァルを適当にあしらった。


「何だよ、気になるじゃんか!
しかし、ルルーシュの趣味って変わってんな〜。」


だが、リヴァルが適当に誤魔化される訳がなく、なおも話しを続ける。

何しろルルーシュが初めて見せた動揺だから興味津々だ。


「だから違うと言っているだろう。」

「そんな誤魔化さなくても良いって!
でも、彼女のどこに惹かれたのか疑問だな。」

「…それはどういう意味だ?」


何気なく言ったリヴァルの言葉にルルーシュは少し興味を示す。


「ライラ・レイン。
良家のご令嬢だけど、容姿も成績も中の中。運動に至っては下の上あたりか?
褒められる点は性格くらいってとこかな。」

「性格が褒められれば充分じゃないのか。」

「だーっ、これだから生徒会副会長で女生徒に絶大な人気を誇るのに浮いた話の一つもないやつは!」


頭を抱えて喚くリヴァルにルルーシュは溜め息をつく。


「勘違いした上に喚くな。
あとそれは俺の勝手だ。」


キッパリ言い捨てルルーシュは自分の席についた。


「しかし、何故リヴァルはこういうのに詳しいのか…。」


半ば呆れたように呟きながら次の授業の準備を始める。


「………。」


ふと目に入ったのは先ほどの女生徒、ライラ。


(目立たない容姿に能力、性格は良いが特定の友達はいない…か。)


リヴァルから聞いた話と少し観察した後に出したライラに関する情報。


(やはりライラとは似ても似つかないな。
だが、ならばどうして似ている気がする?)


答えの出ない自問自答をルルーシュは繰り返した。


その日の昼休み、ルルーシュは食事をとる為、ナナリーと一緒に中庭にきていた。


「お兄様、どうかしました?」

「え?」


ナナリーに突然問われ驚くルルーシュ。


「何だか今日はずっと上の空ですよ。
何か悩み事でもあるんですか?」


自分を心配するナナリーをルルーシュは微笑みながら頭を撫でる。


「ナナリーが心配する程じゃないよ。
ちょっと解けない問題があってね。」

「そうなんですか。お兄様が解けないなんて凄く難しいんですね。」

「あぁ……あっ!」


ナナリーの後ろ側を歩く一人の女生徒が目に入りルルーシュは声をあげた。


「何ですか!? お兄様、どうかしましたか?」


頷いている途中で声をあげたルルーシュにナナリーも驚いたように声をあげる。

流石に目立ったのかナナリーの後ろ側を歩いていた女生徒も歩を止めてこちらを向いた。


「…ライラ……。」


それを見てルルーシュは思わずリヴァルから聞いた女生徒の名前を呟いてしまった。


「…私に何か用ですか?」


自分の名を呼ばれたライラは一呼吸おいてからルルーシュ達の側に歩いて行く。


「お兄様……誰、ですか?」


近付いてきた気配の方に顔をやりながらナナリーがルルーシュに問う。

ライラはナナリーの姿を見ると、ゆっくりと近付き目線を合わせるようにナナリーの横に腰をおろした。


「私はライラ・レイン。
ルルーシュさんのクラスメイトです。あなたの名前も聞いて良いですか?」

「ライラさん……。あ、私はナナリー・ランペルージです。
お兄様がいつもお世話になっています。」

「私はお世話するほど親しくはないですよ?」


ペコリと頭を下げるナナリーにライラは小さく笑う。

ルルーシュは何故かライラの表情から目が離せなかった。


「あ、あのライラさん。今、お暇ですか?」

「え? ええ、お昼休みですし、忙しくはないですが。」


ナナリーの突然の質問にライラは少し驚きながら答える。


「でしたら、あの…ご迷惑でなければ……もう少しお話しませんか?」

「私と、ですか?」

「話し相手になってやってくれないかな。
俺じゃ女の子の話はわからないしね。」


ナナリーの申し出に戸惑うライラにルルーシュが言う。

どちらかといえば内気なナナリーが初対面の人に対して、こういう事は珍しい。

だから断ってほしくなかった。

それにルルーシュもまたライラへ興味があり単純に話したかった。


「そうですね、私で良ければ構いませんよ。」

「あ、ありがとうございます!」


ライラが承諾するとナナリーの顔がパァッと笑顔になる。


「いいえ。でも、面白い話は期待しないでくださいね。」


優しげに微笑みながら言うライラにルルーシュとナナリーはどこか懐かしさを感じた。


それから三人、主にナナリーとライラは他愛もない話で盛り上がった。

ルルーシュはいつも以上にお喋りなナナリーに驚きながらも嬉しそうに二人を見つめていた。

そして、次の授業の準備があるからとライラが席を立った後。


「……ライラお姉様…。」


不意にナナリーが呟く。


「ナナリー?」


ナナリーの呟きを聞いたルルーシュは朝、自分が感じた事を思い出した。


“何故かライラに似ている気がする”


(ナナリーもそう感じたのか?)


そう考えながらナナリーの言葉を待つ。


「ねぇ、お兄様。ライラさんってライラお姉様に似ている気がしませんか?」


(やはりそうか。だが、彼女は別人だろう。
変に期待をさせてもナナリーがガッカリするだけだ。)


ナナリーの言葉を聞いて少し迷うもののルルーシュは否定する事にした。


「確かに声は似ているかもしれないが、外見などは全く違う、別人だよ。」

「…わかっています。
でも、ライラさんといるとまるでライラお姉様がいるみたいで、こんなのライラさんに失礼ですよね……。」

「ナナリー……。」


別人だとわかった上で彼女に愛しい姉の面影を求めるナナリー。

その気持ちはルルーシュには痛いほどわかる。


「今度、彼女を食事にでも招待するか?」

「お兄様…、はい!」


優しい兄の言葉にナナリーは笑顔を浮かべる。


「私、咲世子さんにお料理作るの頼んできます。」

「ナナリー、気が早過ぎだよ。
まだ彼女を誘ってもいないんだから。」


はしゃぐナナリーにルルーシュがそう言うとナナリーは少し俯く。


「あ、そうですね。
ライラさん、来て……くれますよね?」

「あぁ、ナナリーが誘えば来てくれるさ。」


不安げに聞いてくるナナリーの頭をルルーシュは優しく撫でる。


(例え別人でもナナリーが喜ぶなら、それで良い)


そんな風に思いながらも自分もライラと話すのを楽しみにしているのを感じてルルーシュは小さく笑った。










ルルーシュとナナリーと別れてからライラは一人屋上にいた。


(失敗したな、プリントを渡すくらい平気だと思ったのに。)


そう考えながらライラは眉を顰める。

ルルーシュ達を守る為に変装してずっと近くにいたライラ。

極力目立たず、ルルーシュ達に近付かなかったのに。

何の因果かナナリーとまで接点が出来てしまった。


それにナナリーの態度から過去の自分の面影を見ているのを感じた。

ナナリーは目が見えない分、他の感覚が鋭い。


(下手をしたら気付いている可能性も考えおかなくては……。)


ライラは屋上の壁にもたれながら腕を組む。


(今は気付いていなくてもルルーシュは頭が良い。
いつか過去の私に気付くかもしれない。)


そこまで考えてライラは口端を上げる。


(しかし、これも運命……か。)


それすらも楽しいと言わんばかりにライラは笑った。


ライラと彼らの物語は少しずつ動き出す。


To be next stage?




2007.9.28.初出
2019.01.15.再掲載

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あきゅろす。
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