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名前を呼んで[色々]
テーマ【名前を呼んで】
設楽優(旋律)、セバスチャン(黒執事)、ルルーシュ(ギアス)、不二周助(テニプリ)、宵風(隠の王)。




<優しい雨音と温かい太陽>
[設楽 優]

シトシトと雨が降る。

雨は太陽の涙。


いつも眩しく輝く笑顔が

暗い雲に覆われて悲しい雫を流す。


雨が降るとお前に会いたくなる。

悲しみでその頬を濡らすお前を抱きしめたいから。




「優くんっ!」


そんな風に考えていたら不意に名前を呼ばれて


「何でここに…。」


振り返ればお前がいた。


「片瀬さんから怪我したって聞いてっ。」

「こんなの大した事ない。」


そう言いながらも心配して来てくれたのがくすぐったくて

僕に会った途端に晴れていく空が嬉しくて

お前をそっと抱きしめた。




太陽が出て晴れる時はお前の隣にいたくなる。

愛しいお前の笑顔が他の奴に向けられているのが嫌だから。

僕にそんな資格があるのかとか

お前にはもっと相応しいやつがいるんじゃないかとか

考えてしまう時もあるけど。

お前の顔を見るだけで、そんなのどうでも良くなるんだ。




「優くん……。」


お前に名前を呼ばれたら自分の名前が特別なものに思えて。

お前が僕を見つめてくれるから僕の世界は彩りを持つ。

僕はこんなにも人を好きになる事が出来たんだな。

ふと、そんな風に思う。


お前が、お前だけが教えてくれた温かい気持ち。

一方的ではなくお互いが愛する気持ち。


ありがとう、なんて言葉じゃ伝えきれないから

お前に囁こう。

まだ不器用な僕の愛の言葉を。


【水の旋律】
設楽 優






<あくまで、執事ですから>
[セバスチャン・ミカエリス]

私はあくまで執事ですから。

貴女様に仕え、お守りする事しか出来ません。


坊ちゃんには感じなかった“情”というもの。

私にもそんなものがあったのかと

思わず笑ってしまいました。


主従愛か情愛か恋情か

情というものを知らなかった私には理解りません。

理解るのは。


「ねぇ、セバスチャン。」

「何でしょうか、お嬢様。」


貴女に名前を呼ばれるのが誇らしくて

貴女の瞳に私が映るのが嬉しくて


「今日のスイーツは何かしら?」

「今日はお嬢様のお好きな苺のタルトですよ。」

「本当?」


貴女の笑顔を見ると温かい気持ちになるという事だけ。

もしかしたら、これが“幸せ”というものかもしれませんね。


「楽しみにしてるわね、セバスチャン!」

「ええ、後でお持ちしますから。」


まだ理解出来ないこの想いに名前をつくまで

ただ今はお側にいましょう。


貴女の幸せを願う滑稽な自分に苦笑しながら、ね。


【黒執事】
セバスチャン・ミカエリス






<世界は君色>
[ルルーシュ・ランペルージ]

初めて会った時は人形みたいに無表情で無感情で

綺麗なその顔をにこりともさせずに挨拶した。

記憶がなく、どこの誰ともわからない警戒すべき人物。

それが俺のあいつへの印象だった。


だが、すぐに気付いた。

警戒されているのは自分たちの方だ、と。


当たり前のことだ、考えればすぐ解ること。

記憶のない人間にとって信じられるものなどなくて

周り全てが警戒すべきものだったんだ。


そう、自分自身ですらも……。



それはどんなに辛いことなのだろうか。

俺には想像もつかなかった。

俺にはいつもナナリーという絶対的な存在がいたから。


それに気付いてからは俺はあいつによく話し掛けるようになった。

最初は同情に近かったかもしれない。

だけど。


「ルルーシュ、あなたは優しいね。」


あいつが俺の名を呼ぶたびに

徐々に豊かになっていく表情を見るたびに

俺のあいつに対する気持ちが同情ではなくなっていった。


それは友情と呼ぶには甘く情動的な感情。


俺があいつにそんな感情を抱くなんて少し前までは想像すらしなかっただろう。

想像すらしなかったが。


「あ、ルルーシュ。ちょっと良いかな?
この書類についてなんだけど。」

「ああ、これはな…。」


今はお前に逢えて良かったと心底思うよ。


俺を惚れさせた罪は重いぞ。

お前の世界を俺という色で染めてみせるから

覚悟しておけよ。


【コードギアス】
ルルーシュ・ランペルージ






<実は腹黒さん?>
[不二 周助]

キミは中々ボクの名前を呼ばないね。


「不二先輩?」


そんな照れ屋なキミも可愛いけど、ボクは独占欲が強いんだよ。


「これからは名前じゃないと返事しない事にしようかな。」

「え? こ、困りますっ。」

「どうして? いつもみたいに呼んでくれたら問題ないよ?」

「だ、だって……皆いるのに…。」


うろたえてるキミも可愛いなんて言ったら怒るかな?


「じゃあ、キミからキスしてくれたら許してあげるよ。」

「…っ…そんなの無理ですっ!」

「キミはボクを好きじゃないの?」


悲しそうな顔をしてみせれば


「そんな事ないです!」


ほら、キミはあっさりと引っ掛かる。


「じゃあ、名前呼んでくれるよね?」

「し……周助先輩…。」

「フフ、よく出来ました。」


ご褒美と軽くキスをしたら薔薇色の頬をしたキミの顔。


「周助先輩っ!」


怒るキミを優しく抱きしめれば


「ズルイ、です。」


小さく囁くキミの声。


「好きだよ、ボクの可愛い恋人さん。」


この先もずっとキミの唇が紡ぐ可愛い声はボクだけのもの。


【テニスの王子様】
不二 周助






<寂しくて優しい君>
[宵風]

僕は消えたい、誰の心にも残りたくないんだ。

なのに。


「宵風。」


君は頑なに鎖した僕の心にすんなりと入ってくる。


「ほら、宵風。眉間にしわ。」


君が僕の名を呼ぶ。

躊躇うことなく僕に触れる。

拒絶したいのに、その手を振り払いたいのに。


「宵風。」


君の笑顔を壊したくないと

愚かな僕の心が邪魔をする。


僕なんかに笑いかけないでくれ。

君は光が似合う人だから。

闇は似合わないから。


「私、闇も好きよ。」

「…っ…。」

「優しくて寂しい闇。私は抱きしめたいの。
ねぇ、宵風……消えないで消さないで、大切なの。」


僕の心を見透かす優しい温かい君の心。


駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!

これ以上、近付くな。


「僕は…」
「宵風。」


僕の言葉を遮るように君の指が唇に触れる。


「今は良いの。
私、宵風に呼ばれたらどこでも駆け付けるから。」




――独りにならないで――




優しく入ってくる温かい言葉。

もし、奇跡があるなら

僕も君との未来を願っても良いだろうか?


君の笑顔の前で浮かんだ小さな願いは

心の奥底で眠らせる。


「宵風。」


今だけだから、少しだけだから。

いつか僕が君の中から消えるとしても……。


【隠の王】
宵風



2008.6.18.初出
2018.10.03.再掲載

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