狼の鳴く静夜
9*(微)
「俺の部屋…は?」
自分の浴衣をじろじろと観察しながら片瀬に問うてみた。
片瀬はすっと指さし、こう言った。
「すぐそこの襖を開けると部屋がある。
本山がやったろうから生活に必要なものは全て揃っているはずだ。」
俺は、そう言われて唖然とした。
そんなすぐに部屋って出来るのか?
物音なんかしなかったが…
とりあえず指差された襖を開けて、隣の
部屋、兼俺の部屋を覗いてみた。
本当に全部揃ってやがる…すげぇな。
俺が感心していると、後ろでパソコンを
扱っていた片瀬が呟いた。
「今日はもうお前に用はない。
部屋に行って寝ろ。何かあったら起こす」
すっかり仕事モードに切り替わったのか、眼鏡まで掛けやがって、慣れた手付きで
キーボードを打っていた。
ち、いちいち様になるな。
そして俺は仕事をする片瀬から視線を離して自分の部屋を見渡した。
後ろ手で片瀬と自室を繋ぐ襖を閉める。
ベッド、テーブルはもちろんテレビや何故か勉強セットまで置いてある。
いらねぇもんがあるが、気にしない。
そして、癒やしを求めてぽすっとベッドに横たわって目を閉じた。
今日1日で色々なことがあった。
まさかヤクザなんてものと関われるなどとは思っていなかったし、ましてや入れるなんて事は生涯ないと思っていた。
別に入りたかった訳ではないが…。
自分で自分に言い訳をしていると、身体がスプリングの上で揺れた。
何だ、と目を開けてみると見たくもない
ものが目の前にあった。
「んぅっ…!?ん、んんっ!」
「うるせぇ、組長にバレたらどうすんだ。静かにしろ。」
何だコイツ!!
いきなり人の顔が目の前にあって、しかもその瞬間キスをされたら誰だって騒がしくなるだろうが!!
しかも…犯人はまたしても頭木。
何しに来たんだよコイツは。
俺は必死になって頭木の行為を辞めさせようと抗議した。…が。
「ん…ぁっ、ふ、ん…っん、」
口を開けば舌が入り込んできた。
いつの間にか両耳を塞がれ、頭の中は淫靡な水音で埋め尽くされていた。
ぴちゃぴちゃという音が頭の中で木霊する
「ぅ…んぁっ…か…しらぎぃっ…ん」
暴れるように、掻き回されるようにして
頭木の舌が俺の口の中を動き回る。
酸素が足りない。
俺はまるで池にいる鯉のように少しの間に息を吸い込んだ。
呼吸が荒くなって、息が苦しい。
「かしっ…んぁ…はッくる…っし、んっ」
「その顔たまんねぇ…」
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