[携帯モード] [URL送信]

狼の鳴く静夜


「蘭、お前の世話係は高城にするが、
それでいいか?」

組長は、悲しげな顔から一変して茶化す
ような年相応の笑顔を見せた。
あ…イケメン。
ふと、無意識に思った。
何でコイツヤクザやってんだろ…こんな若いのにしっかりしてら。
って、世話係?何か聞き流してたけど、俺ここに住む感じで流されてねぇか。

「まてまてまて。誰がここに住むっつった。俺は帰るぞ。」

て言うか、寒い。
本山が服持って来ねぇと寒い。死ぬ。
アイツ何やってんだよ。

「お前は今日からここに住む。
俺の猫になったんだから当然だ。
あと、携帯は解約させて貰った。」

「あぁ!?」

「明日新しい携帯をお前に渡すから
明日からそれを使え。」

「何勝手にやってんだよ!!!
あれは…」

「心配するな、メモリは移してやった。
…母親以外のものは全てな。」

「っ…………。」

「やはり、お前には何かありそうだな。
これからよろしくな、蘭。」

「…俺、お前の名前知らねぇんだけど」

「片瀬棗だ。」

「は、ヤクザには似合わねぇ名前。」

「よく言われる、可愛いと。」

「可愛い?お前が?」

「他に誰がいる。」
冗談を言いそうにない奴がこういうこと
言うと、シュールって言うか、面白い。
いや、もしかしたら真面目に言ってるのかもしれねぇ。目がマジだ。

「楼巳、お前の服だ。
着れないのであれば裸でいろ。」

サッと襖が開けば、本山が片瀬と似たような浴衣を放り投げた。
やっとか、と溜め息をつくものの…。
浴衣の着方知らねぇぞ俺!
俺が、浴衣を掴んだ状態で固まっているのを見かねた片瀬が、来いと手招きした。
片瀬は俺の浴衣を持って立ち上がり、はぁと溜め息をついた。
溜め息つかれるのは俺だった…。

「帯を持っていろ。俺が着せてやる。」

「っ…、」

俺らの会話を横から聞いていた本山は、
悔しそうな顔をすると、部屋から出て行った。あれ、俺の部屋の案内は…?

シュル…と布が擦れる、何だか眠くなりそうな音が部屋に反響する。
片瀬の着付けが思ったより手際が良く、
数分で出来上がってしまった。

「すげ、サンキュー。」

「造作もないことだ。
明日高城にでも教えてもらえ。」


[*前へ][次へ#]

8/14ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!