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狼の鳴く静夜


「なんだぁ?威勢がいいだけじゃねぇか」

頭木は馬鹿にしたように目を細める。
俺はひたすら蹴りを繰り出した。
しかし男は必ず手足で避ける。
何度も空振りしてるうちに俺はいつの間にか息切れしていた。しかし頭木は一切息切れもせず、ただ笑っていた。

「そろそろ反撃するぞ?」

頭木が一言そう言うと、たちまち鋭い
攻撃が俺を襲った。
腹を重心的に狙われ、吐き気がした。
嗚咽が止まらずに、ロクな抵抗もできず、ただ頭木からの攻撃を受けていた。

「うっ…げ、ぇ…!がはっ…!!」

「いいなぁその顔!!おれぁ好きだぜ!」

もう誰が何を言ってるかわからず、最後に鳩尾を殴られ、俺は気を失った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
◇◇




「………ん。」

どこだ、ここ。
見たこと無い和室。

「…っ、てぇ…。」

起き上がろうとすると、腹部に酷い痛みが走った。ついでに吐き気もする。
そうか、確か頭木に…。
思い出すと、違う意味で吐き気がする。
今まで自分が強いと思い込んでいたのが
たまらなく恥ずかしい。
そして、頭木にあそこまで一方的に気絶
させられたのが悔しい。

「っ…くそ!!!」

痛む腹を無視してガンッと床を殴った。
ちくしょう、負けた事を認めたくねぇ自分がいることに腹が立つ。

と、その時襖が開いた。
入ってきたのは、今俺がイラついてる元凶の頭木、と高城だった。高城は少しバツが悪そうな顔をしながら話しかけてきた。

「組長がお前の事呼んでる…。
立てるか?手伝ってやるからすぐ行くぞ」

「よぉ坊主。もう少し優しくしてやりゃあ良かったか?悪いな。」

頭木は悪びれもなくそう言ってきた。
まぁいい。実力的に俺が下だからな。
立とうとしても足に力が入らねぇし、第一腹が痛すぎてどうにもならねぇ。
高城が片方の肩を担いでくれてるが、もう片方も担いでくれなきゃ歩けねぇぞ…。

「ったく、しょうがねぇなぁ…。
坊主!これに懲りてちったぁ大人しくしろ!あと誰にでも喧嘩売んじゃねぇ!!」

柏木は俺に悪態をつきながらも、片方の肩を担いでくれた。
俺が寝ていた和室を出て、さっき戦闘していた場所に再び訪れた。

「組長、高城です。」

入れ、と中から声が聞こえ、高城と頭木が俺を一番最初に押しやった。
自力で立てなかった俺は、組長の前に無様に転がった。こんな屈辱味わったの初めてだ。

「気分はどうだ小僧。」



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