[携帯モード] [URL送信]

93゚
(10)

 
教会に着いて裏口から入ると、長い赤い絨毯が続いていた
 
初めて出会った日から、何度か遊びに来たけどなんだか慣れない
 
詩遠の部屋に向かって、一直線に幸慈さんは走る
 
本当に…詩遠が好きなんだな。そう思う
 
俺は―――…
 
 
詩遠の部屋に入ると遙さんが誰かに電話しながら待っていた
 
なんで…?
 
俺達の存在に気付いたのか素早く電話を切り、幸慈さんに礼をして一歩下がる
 
詩遠をベッドに寝かし、自分も一緒に布団を被る幸慈さん
 
羨ましくて詩遠の部屋を出た
 
泣きそう……
 
教会を出て家に帰ろうと街を歩いていると、手を後ろに引っ張られた
 
「君1人?……可愛いねぇ」
 
ニヤニヤ笑ながら話しかけてくる
 
女の子と間違われてる?
 
「俺、男ですっ」
 
「まじで?」
「アハハッ…女にしか見えねぇだろ!!」
「男でもイケるだろ」
 
……なんかヤバイかな?
こういう場面は何回もある
 
でもいつも学校の友達が助けてくれる
 
そんな事をボーッと考えていると、更に引っ張られた
 
「やだっ離して」
 
「いーから来てよ」
 
周りの人は見てみぬふり…もう無理なのかな?
 
希望を無くすと……
 
「……はぁ、何してるんですか?」
 
呆れたような声が前方から聞こえた
 
さっきまで知らない人と話してたくせに
 
詩遠には優しくするくせに
 
幸慈さんじゃなくて遙さんに一番に来て欲しかったのに
 
俺に絡んでいた男の人達は、遙さんが怖かったのか逃げてしまった
 
「大丈夫ですか?」
 
「…ありがとうございました」
 
一方的にお礼を言って歩き始める
 
今までそんな態度をとった事がないから、遙さんは吃驚したように俺の腕を取った
 
「志紅君?」
 
「離してっ!!…遙さんなんか大っ嫌い!!」
 
そう言い残して家に向かって走った
 

[←][→]

10/17ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!