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93゚
(09) -Side詩遠-

 
やっぱり、幸慈は優しい。最初は態度とか、目つきとか怖かったけど、俺のことちゃんと考えてくれている。
 
それに…幸慈が笑うと身体が熱くなるんだ。これって、何なんだろう…?
 
「ベッドは…何色がいいかな?」
 
今までは黒と白でまとめてきた。でもベッドは黄色と水色、赤しかない。
 
ベッドが赤なのは…やだ。それは幸慈も思ったのか、いきなり店員を呼び出した。
 
「おい。これの黒持ってこい。
明日までに完成させろ」
 
女の店員さんは頬を赤らめて幸慈を見つめる。一瞬だけ胸が痛んだ。…?
 
あまり気にせず止めにはいろうとする。違うタイプのベッドにすればいいし。
 
「こーじ…いい「聞いてんのか?
早くしろっつてんだ」
 
女の店員さんは目に涙を溜め、震えた声で返事をし、走り去って行った。さっきの幸慈の声には、男の俺でも震えたよ。
 
「こーじ…今のは酷いよ」
 
「ああ…つい癖でな。気をつける」
 
苦笑いを浮かべ次の場へと足を進めていった。癖であんなの毎回されたら、俺の心が持たないよ!!
 
…って、これで会うの最後かもしれないのに、なんで先のこと考えて…。そこまで考えてやめだ。ぐるぐるしてきたからさ。
 
 
その後、机・椅子・本棚・クローゼット…生活に必要なものは全部買い揃えてくれた。総額、やばそうだなあ。
 
店を出て車を走らせる。少しして信号で止まり、隣で運転している幸慈に目を向けた。
 
「お金…返すね?」
 
「倍返しになるぞ?
…俺は久原幸慈。久原組の組長だ」
 
久原?…あ、なんか聞いた事があるような。
 
ばあちゃんがヤクザはいけない奴らだけど、久原ってとこは…なんて言ってたかな?よく覚えてないけど。
 
「俺が、怖いか?
――…金は気にするな」
 
「ううん。こーじ優しいもん、
怖くないよ?…ありがとう」
 
 
 
 
 
ねぇばあちゃん。
 
…ばあちゃんが幸慈と俺を出会わせてくれたの?
 

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あきゅろす。
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