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(09) -Side詩遠-
やっぱり、幸慈は優しい。最初は態度とか、目つきとか怖かったけど、俺のことちゃんと考えてくれている。
それに…幸慈が笑うと身体が熱くなるんだ。これって、何なんだろう…?
「ベッドは…何色がいいかな?」
今までは黒と白でまとめてきた。でもベッドは黄色と水色、赤しかない。
ベッドが赤なのは…やだ。それは幸慈も思ったのか、いきなり店員を呼び出した。
「おい。これの黒持ってこい。
明日までに完成させろ」
女の店員さんは頬を赤らめて幸慈を見つめる。一瞬だけ胸が痛んだ。…?
あまり気にせず止めにはいろうとする。違うタイプのベッドにすればいいし。
「こーじ…いい「聞いてんのか?
早くしろっつてんだ」
女の店員さんは目に涙を溜め、震えた声で返事をし、走り去って行った。さっきの幸慈の声には、男の俺でも震えたよ。
「こーじ…今のは酷いよ」
「ああ…つい癖でな。気をつける」
苦笑いを浮かべ次の場へと足を進めていった。癖であんなの毎回されたら、俺の心が持たないよ!!
…って、これで会うの最後かもしれないのに、なんで先のこと考えて…。そこまで考えてやめだ。ぐるぐるしてきたからさ。
その後、机・椅子・本棚・クローゼット…生活に必要なものは全部買い揃えてくれた。総額、やばそうだなあ。
店を出て車を走らせる。少しして信号で止まり、隣で運転している幸慈に目を向けた。
「お金…返すね?」
「倍返しになるぞ?
…俺は久原幸慈。久原組の組長だ」
久原?…あ、なんか聞いた事があるような。
ばあちゃんがヤクザはいけない奴らだけど、久原ってとこは…なんて言ってたかな?よく覚えてないけど。
「俺が、怖いか?
――…金は気にするな」
「ううん。こーじ優しいもん、
怖くないよ?…ありがとう」
ねぇばあちゃん。
…ばあちゃんが幸慈と俺を出会わせてくれたの?
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