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93゚
(08)

 
朝、目が覚めると一番最初に幸慈が映った。ピクッと身体が跳ねる。あれ、なんで?…暫く考えて止めた。
 
昨日泊まっていったんだよなあ、覚醒しない頭で思う。ふと携帯を見ると、雅之さんから着信15件・メール8件が入っていた。
 
「…へ、」
 
マヌケな声が出る。いや、この気持ち分かって欲しいんだけどさ。取り敢えず、電話をかけ直す。
 
「あ、もしも…」
『詩遠くん!?幸慈さんどこにいるかわかりますか!?一緒にいますか?昨日から帰ってこなくて』
 
…姿を見なくても分かる。すごく焦ってるんだろうなって。多分、書類片手だ。
 
「あ、うん。ごめんね?
昨日さ文化祭でこーじ来てくれてね、そのまま寮に泊まってくれたの」
『あ〜もうっ、
そうですか。ありがとうございました。』
 
「では」と電話を切る。なんか必要だったっぽいけど…幸慈に言った方がいいよね?
 
横で気持ち良さそうに寝ている幸慈を見る。うっ…起こすの可哀相かも。で、でも…
 
迷いに迷った挙げ句、起こすことに決めた。だって、困ってそうだったんだもん。
 
「こーじ…起きてー、
おーきーて、おーい。おーい。」
 
何故か小さい声しか出ない。罪悪感なのかな?
 
全然起きないんだけど…。どうしたらいいんだろう。雅之さん、ごめんなさい。俺は力になれないみたい。
 
時計を見ると、5時過ぎ。今日は午後からだし、午前は幸慈が平気だったら一緒に回りたいなあ。
 

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