93゚ (14) -Side真矢- ………目の前には腕を押さえた詩遠。僕の手にはナイフ。周りには倒れてる生徒会役員。僕を睨むヤクザの人。 僕が詩遠を傷付けた…?そんなはずはない…僕が詩遠を…… 「あ、れ…?…………僕」 詩遠が立ち上がる。慌てて手を引く。駄目だよ…独りにしないで。傍にいてよ。 「僕の詩遠だ…駄目。行っちゃ駄目。嫌だよ。駄目駄目駄目だめだめ!!」 手が勝手に詩遠を傷つける。ヤクザの人が詩遠の名を叫ぶ。銃を向けられているのもわかった。 でも詩遠は…"やめろ"って"俺の友達だ"って。なんで………逃げれるでしょ? 違う、逃げれないんじゃない。逃げないんだ。詩遠は僕の目を見る。なにもかも見透かされてるみたい…こわい…っ 「そ、んな…」 「ん?」 優しい目。すべてを話したい。――…話したら?詩遠はわかってくれるのか?どうせ詩遠も… 「ふう…、やっとか 俺ね、真矢み…たいに、母親いなっ、いんだ。ついでに…はあ、親父も。寂し、なら俺にいいな? ちゃ……と構ってやるから」 …口が閉じれなかった。詩遠に両親が?知らないよ…なんだ、僕だけじゃない。僕…、詩遠になにしてた………? 「ごめっ、僕っ、ひど…いこと………あ、なにしてんだろ、ぼく、ぼく、」 「真矢は、寂しかったんだよな…?俺もそう、いう時期あ……ったんだ。 でもみんな哀、れみの目で見てきた。誰にも…くっ…必要とされていないよ、な気もした」 死にたかった。小さく呟いた詩遠の横顔は悲しく儚かった。涙が………止まらない。 「でも支えてくれる人がいた。真矢に、もいるよ? 俺もいる。生徒会のやつらもいる。クラスのやつもいる。………………大丈夫だよ。」 [←][→] [戻る] |