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93゚
(07)

 
…でかい。いや、車がです。真っ黒に染められた車。タイヤの上ら辺になんかマークがあるのは、気のせいだ。
 
俺はどこに連れて行かれるんだろう。まさか…っ、このまま海にしずめられたり、内蔵売られちゃったり。
 
「お前、名前は?」
 
「うわあっ」
 
いきなり話し掛けられ、身体が不思議に震える。ミラー越しに見つめられ、少しだけドキッとした。
 
「俺は幸慈だ。
好きなように呼べ」
 
「こーじ?」
 
「……それでいい」
 
一瞬だけ笑った顔は優しくて綺麗だった。悪い人じゃないみたい。警戒は解かないけどね!!
 
「あ、俺は詩遠です」
 
「ああ。いい名だ」
 
…これは素直に嬉しい。てか、呼びすてで良いのかな?…ま、いっか。
 
 
車が止まった場所はどデカく白くお城みたいだった。…、庶民には不釣り合いです。
 
って俺!!金持ってないじゃん。幸慈の服の裾を引っ張る。
 
「俺、金持って…「俺が払うから良い」…はい」
 
店の数ヶ所ある入り口から、一番近い入り口から入るとお客さんが一斉にこっちを見た。だよな…だって隣にはかっこいい幸慈がいんのに…俺オイっ!!
 
ガキみたいな奴がこんな店にくる事自体おかしいって…。軽くショックだよ。
 
「チッ……」
 
…舌打ちィィイ!?
 
幸慈を見るなんて、そんな恐ろしいことは出来ない。心を静めて、店を見る振りをする。
 
「こーじ、どこ行くの?」
 
「あ…ああ。こっちだ」
 
そう言いながら俺の腰に手を回す幸慈。え、なに?…女の子扱いされてないか?
 
そんなこと幸慈に言えるはずもなく、大人しくされておいた。でもやっぱり慣れないよな。
 
「わあっ…綺麗」
 
上に上がるにつれ、周りはキラキラしていて思わず声があがる。すると頭に大きな手が置かれた。
 
「…良かったな」
 
「うん!!…すっごい綺麗!!」
 
嬉しくて笑顔で返事をした。幸慈もそれに笑ってくれて、ちょっと見惚れた。…なんてのは勘違いだ。
 


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あきゅろす。
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