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TRANSACTION【BL】
取り引き1


「はぁ!?勉強!?」


目の前に置かれた大量の参考書。

入試の過去問、ノート、教科書。

そして、見張り番だと言わんばかりの
教師係、東さん。




あの後、飯を食ってから再び部屋に戻り、
旭と話し合いをした。

あくまで俺は、復讐心を無くすという
名目でこの組みに入った。

向こうにゃなんのメリットもない。

だから、せめて大人になった時に
役立つために、今のうちに
然るべき勉強をしろ、と言う。

その言葉は、ようするに大人になっても
俺はこの組にいるってことだ。

そりゃ、生半可な気持ちで入ったわけじゃ
ないが、もう将来の事もわかりきっていると
畏怖感というか、なんとなくそういう念を
抱いてしまう。


旭は言った。


「これは取り引きだ」


と。


それは俺への優しさか、
まだ信用していない気持ちから出た
本心か。

何はともあれ、俺は高校受験までの
二ヶ月、猛勉強をしなくては
ならなくなった。



「俺、めっちゃバカですよ」

「そんなこと承知の上だ。
何の教科が得意かわかるか?」

「えと、…多分、数学です」

「ほぉ、俺は数学嫌いなんだがな。
じゃあやるか。
あ、ちなみに受験までは睡眠時間三時間。
飯は一日一食。風呂は週に二回の
生活を送ってもらうからな」

「…まじ、」


おいおい、俺一年生の頃からまともに
授業なんか受けてこなかったけど、
本当に大丈夫なのかよ。

しかも教師係東さんだけど
この人本当に頭いいのか?

見た目は見る限り一般人からでも
ヤクザってバレそうな風貌で、
シャーペンを持つ姿も、参考書を
持つ姿も、何一つ様にならない。




「心配すんな。東は東大卒だ」

「東大…?」

「それも法学部のな。
一応うちの弁護士をやってもらっている」



このご時世、ヤクザも頭が良くなくては
いけないらしく、東さんは旭組には
欠かせない人なんだそうだ。

歳は30ぐらいか?

年間物凄い人数が落ちる司法試験に
この歳で受かって、しかももう
弁護士の資格を持っているなんて
驚きを隠せない。

更に驚くべきことは、そんなに天性の
才能を授かっておきながら、
何故この業界に入ってきたのか。

聞くのもなんか怖いので、
あまり詮索はしないでおこう。



それに、ふとしたときにやはり
両親のことを思い出してしまうので、
こういう余裕のない生活を
遅れるというのはありがたい。

俺、頑張るから。
母さん、父さん。







「男女…こ、よう…きかい、
きん、と、うほう!!よし!言えた!
言えたぞ東さん!」

「おぉ、偉い偉い。じゃあこれは?」

「男女共同…さん、さん…」

「男女共同参画社会基本法な」

「はい!はい!俺これ言える!
女子差別撤廃条約!」

「おぉ、すげぇじゃん。
じゃあこれは?」

「こどもの権利条約!
バカにすんな!」



なんとか、頑張れそうです。



*Transaction…取り引き






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