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TRANSACTION【BL】
悪夢2


深夜にドアを壊す勢いで
取立てをしに来たあいつらを、
俺が物心つかない頃に俺を売る
話を持ちかけてきたあいつらを、
両親が、何とかできるはずがなかった。

限界だったんだろう。

精神も、肉体も、
俺を守り続けることも。

全てが限界だと悟り、
命を捨てようと企てたのは
いつだったのだろうか。

俺が一人になって孤独を感じ、
寂しく思うことは考えなかったのだろうか。


力の抜けたそれに視線をやると、
どこか安堵からか脱力したようにも
見えて、不意に‘おめでとう’なんて
言葉が脳裏を過ぎった。

よかったじゃんか。

楽になれて。

もうビビって生きなくていいんだろ?

そっちで楽しくやりゃあいいじゃねぇか。

‘俺を残して’



椅子の上に立って、ゆっくり
重くなった両親をテーブルに
下ろした。

目を閉じてやり、この行き場のない
怒りと消失感を物に当てた。



何故両親は俺を残した?
これからどうすればいい?
金は?飯は?
貯金があるなんて聞いたこともねぇ。
家賃を毎月払えてるなんて
聞いたことねぇぞ。
あいつらが来たら?
「死にました」っつって俺が売られるか?
全然先が見えねぇ。
なんで、なんで俺を連れていって
くれなかったんだ。
人を殴ったこと謝る。
いつの間にか門限守らなくなったことも、
いつだか飯少ないだの駄々こねたことも
全部謝るから。


「俺を独りにしないでくれ…」


ドンドンドン!
ガチャガチャ、ピンポーン

間の抜けたインターホンの音に、
俺は涙をぬぐった。

あいつらだ。

俺らの生活を脅かした
クズが来た。


俺は無意識にキッチンから
包丁を取り出した。

ヤクザは銃を持ってるなんて言うが、
本当かどうかわからないし、
第一玄関開けた時の距離じゃ
関係ねぇだろ。

また、俺の悪い癖である
‘なんとかなる’が出たのだ。

冷静に考えることを忘れ、
大人を舐めてかかった挙句に
自分に返ってくるのが、
まだなんなのか理解していなかった。


ドアノブに手をかけ、
もう片方の手で鍵を摘む。

これを開けたらすぐに殺そう。

刺すんだ。
しっかり殺せ。
両親の敵だ。

これは喧嘩じゃねぇんだぞ。



「っ…く、うぉあぁああああ!!!」


不意打ちを狙って包丁を振りかざした
俺の頬に男の拳があたり、
俺は室内に逆戻りになった。

包丁が音を立てて転がったのを頭の
片隅で聞き、脳しんとうを起こした
俺の身体は全く動かなかった。


「なるほど。そういうことか」


テーブルの上の死体を見て、
俺を殴った男は顎に手を添えた。

今すぐにでも包丁を取って
殺してやりたいのに、
身体が動かねぇ。

なんだこれ。

こんな化け物、今まで喧嘩してきた奴の
中にはいなかった。

これが、大人。
両親を殺した、ヤクザ。


「じゃあお前は息子か。
ほお、一人残されたわけだな。可哀想に」

「っ…てめぇ!」

「なんだ、違うのか。
じゃあ裏切られたのか」

「…!」

「図星か。
…おい、こいつを運べ」


複数の男達が外から入ってきて、
項垂れた俺を二人がかりで担いだ。

そして下の駐車場に止めてある
ブラックのバンに連れていかれた。

三人くらいの男は、中に残って男と
話していた。

もう自分がどうなるのかわからなくて、
意識を手放そうと目を閉じた時


「おい、神島組の方々じゃねぇか」

「あぁ?」





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