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TRANSACTION【BL】
悪夢1

小さい頃から、俺の家は
裕福ではなかった。

それどころか、周りの友人と同じ
ゲーム機は買い与えられず、漫画も
おもちゃも何も買ってもらえなかった。

しまいに俺の家にはテレビが
無いことが、自分の家計に何か
問題があるのではないかと不審に
思ったきっかけだった。

友人が持つゲーム機が羨ましくて
奪ってしまったり、家に遊びに行った時に
テレビに齧り付いて迷惑をかけたり。

そんなことばかりする俺を、
両親は決して怒らなかった。

「ごめんね」といつも口を揃えて言われ、
子供ながらに居心地が悪かったのを
覚えている。


そして、そのせいかなかなか
傍若無人に育ってしまった俺は、
見事に中学生でグレた。

と言うのも、両親があまりに俺を
見てくれなかったから
振り向いて欲しくて、という
子供ならではの身勝手から織り成す
行動だった。

ただ、笑ってくれるだけで
良かったんだ。

物を買ってくれなくてもいい。
飯だって旨くなくていい。
ただ、3人で‘家族’をやっていきたかった。

それだけだったのに。










「母、さん…っ、父さん…?」

そんな儚い願いは、たった数分のうちに
打ち砕かれたのであった。


友人に呼ばれ喧嘩に駆り出された俺は、
数年前から生気を失ってしまった
両親を尻目に外に出た。

そして適当に片して帰ってくるまでの
約20分間の間に、


両親は死んだ。


首を吊って、今まで見たことのない
形相を残して、両親は逝った。

部屋には耐えられない汚物の臭いが
充満していたが、俺は足に力が
入らず、床にへたりこんだ。

情けない。

死体にびびってへたりこんだ
自分がじゃない。


ずっと一緒に暮らしてきた両親を、
何故俺は支えてこなかったか。

自分勝手に喧嘩して歩いて、
両親の悩み事を聞き出そうともせず、
ほっつき歩いていた自分が
どうしようもなく情けなくて、
涙が出た。


おおよそ、予想はついていた。

両親は、借金取りに追われていた。

感づいていたはずなのに、
俺は、何もせずに傍観者を気取ってた。

どうせ何とかなる。

そんな気持ちでいたんだ。





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