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liar girl
Incredible truth


「僕が主人公ですか……」



多分いわゆる“トリップ”と言われるものをしてから早十数分。

道子さんの口から出てきた話は、僕―――黒子テツヤが主人公のバスケットマンガ、“黒子のバスケ”について。

聞いてる限りでは記憶の通りですし、矛盾も見つからない。

かと言って、素直に認められるほど僕達は大人ではない。

現に表情筋があまり動かない僕もふくめ4人とも固い顔をしている。

そんな中、ほのかさんが少し大きな鞄を持って降りてきた。


「これがいってたマンガ。“黒子のバスケ”。騙されたと思って読んでみて」


道子さんの言葉で改めて机の上に置かれた数十冊のマンガをみる。

主人公っていってただけあって僕が表紙のもありますが、火神君も多いですね…。

そう思っているとほのかさんに一冊渡され、読み始める。

どうやら僕が読んでいるのは一巻のようで始まりは誠凛高校に入学したあの日からだ。

読み進めていて、言葉や事が一致していく度に頬が微かに引きつるのがわかる。
此処までくると……恐いです。





Incredible truth





やっと残すところ後10ページぐらいになったとき高尾君が感嘆の溜め息をしながらマンガを閉じる。


「マジで一文字一句変わらない…」


はい、それについては僕も同意ですよ。

その場に居たのかと疑いたくなります。

…それにしても彼女は居なかったですね。

多分他の巻で出ているのだろうと推測し最後まで読み切る。

青峰君や赤司君もまだ出てきてませんし。


「確かに冗談では無そうだな」

「何時帰れるんスかね…」


同じタイミングで読み終わった黄瀬君と宮地さんがポツリと呟いた言葉は頭にこびりつく。

確かに、ずっと死ぬまでこのままは嫌です。

けど、何時なんて分かったら心配なんて必要ないですよ。


「…4人さえよかったら、帰れるようになるまでうちに居てたらいい」


脈絡無く道子さんが発した微かな声は静まり返ったこの部屋ではよく響いて、僕たちは目を丸くする。

確かに、此処でお世話になれたら…とは思っていましたけど、言われるとは。

驚きと少しの喜びで何も声を発せずにいると、無言で立ち上がったほのかさんが階段の方へ向かい途中で思い出したかのようにたちどまり振り返る。

『居ることについては何も言わない。けど、言っとく。うち―――“黒子のバスケ”嫌いやから』

「ちょっ、ほのか!」

道子さん以上の脈絡の無さに僕たちはが固まり、ほのかさんがドアを閉めた音で我に返った。

「……ほのかから許可貰ったからさっきのことについてやけど、四人は良いん?」

「そりゃ泊めてもらえるほうが良いけど…」

「あんな事言われた後ッスし…」

「その前に一つ良いか?」

高尾君と黄瀬君が顔を見合わせていると宮地さんが小さく手を挙げる。

「俺たちはこちらの世界からしたらマンガのキャラで逆旅だっけ、その現象で今此処にいるってことであってるんだよな?」

「宮地さん、逆トリップですよ」

「あっそれ。サンキュー黒子」

「そうやで。まぁ、何時かは帰れるはずやから安心し」

苦笑いする道子さんに恐る恐るという感じで黄瀬君が尋ねた。

にしても、関西弁って代名詞が妖怪サトリのあの人が出てきます。


「ほのかサンはそれを知ってるんスか?」

「多分知ってると思うで」


何故また曖昧なのだろうと思っていると続いた言葉で納得する。 


「私の趣味がアレやからあんまりマンガとかについて話さんけど、アニメはよく録画しとるしな」


アレの部分で確かにと頷くのが二名。

首を傾げるのが一名。

そして笑いを堪えているのが約一名。

一体君の笑いのツボはどれほど浅いんですか…。 

けど…空元気は見ててツラいです。


「そやそや、それよりって言ったらアレやけど此処に暫く住むので四人とも大丈夫?」


その言葉に僕達が頷くのを見て話を続ける道子さん。


「この家には少し大きめのゲストルームが一個空いてるから、そこを四人で使ってほしいんや。食事とかはこちらでやるから、出来ることだけ手伝ってくれたらいい」

ほな案内するわ。 

言うと同時に立ち上がった道子さんの奥に一瞬見えたデジタルカレンダーには“3/21 14;59”と見えた。

…通りで少しあったかかったんですね。


〜嘘のような真実〜
 

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