liar girl
Downright lie
寝坊して遅刻やと走って学校に行く途中、全校朝礼だと思い出し顔を青くしていると、実は創立記念日で休みだった。
仲のいい歌が下手なばずだった友達が実は有名な歌い手だった。
絶望的だと思っていたテストが91点だったが、お爺ちゃん先生の採点ミスで9点だった。
等々という事を体験したことがうちにはある。
まぁ、なんでこんな事を言いだしたのかというと…
「すいません。足を誰かに引っ張られてるみたいで…手を貸してもらえませんか?」
今はそれ以上、いや数倍の肝の潰しようや。
只うちは図書館から帰ってきてキッチンで水を飲んでいただけやのに、リビングから母の驚いた声が聞こえて駆けつけると……片足をテレビに突っこんでいる何処かで見たことある顔の水色髪の男子がおった。
「テツくんだ…」
母がポツリと呟いたその言葉は思っていた事を肯定する。
「えっと…」
少し困った顔でうちと母を交互に見る彼を見て、ソッと手を伸ばす。
「ありがとうございます」
あまり表情を変えない人の笑顔の破壊力はすごいわ…。
なるべく頬が弛まんように気をつけるので精一杯やって、彼の足を掴んでいた青色のジャージにうちの目が止まるのはあと数秒後。
Downright lie
「宮地清志、秀徳高校三年。…バスケ部だ」
「高尾和也、秀徳高校一年ですっ!バスケ部レギュラーでポジションはPG(ポイントガード)!!」
「黄瀬涼太、海常高校一年ッス!バスケ部レギュラーのSF(スモールホワード)で宮地サンと同じポジッスよ!!」
「黒子テツヤ、誠凛高校一年です。一応バスケ部レギュラー…ポジション不明です。けど、パスは得意ですよ」
「黄黒!宮高!いや…黄高と宮黒やな!」
個性のある自己紹介をどうも。
知ってたけど助かるわ。
黒子を助けたあと、芋づる式で黄瀬、高尾、宮地と続いて画面から出てきたのは腰を抜かしそうになった。
んで今はテーブルをうちを含んだ6人で囲んでる。
確かにテレビは黒バスの映像がながれてるけど…普通そこから逆トリしてくるもんか?
まぁ、逆トリ自体普通ではないけどな。
何がともあれ、取り敢えず…
『母さんは黙っとれ。うちは桜本ほのか、高校二年。そこでクッションに顔を埋めているのは母の桜本道子』
そう簡潔に言うが、高尾は笑い転げていて黄瀬と黒子は顔が引きっている。
宮地だけ「よろしく」と言ってくるあたり、意味が分かってない純情クンということやろう。
普通は黄瀬や黒子の反応やと思うんやけどなー、ってそや。
『WC(ウィンターカップ)って終わった?』
「…?あっーーーー!!!」
『っ…!?黄瀬ェ…』
脈絡なしに言ったうちもわるいけど、そんな大音量で叫ぶな。
鼓膜が破れてしまうやろ。
ほら、ガラスも揺れてるし…。
愚痴を少し大きめの声でこぼすも当の本人はどこ吹く風で。
「そうっスよ!ブザービーターがなった瞬間に!!」
「あぁ…確かにラストの記憶はそうだな」
ちょい待ち。
黄瀬、宮地勝手にそっちで話を進めるんやない。
すると親切にも、話に着いていけてないうちに黒子が教えてくれた。
あっ、ちなみに高尾はまだ笑い転げてる。
「4人の記憶が同じだと仮定して話しますね。WC決勝戦―――つまり洛山対誠凛の試合終了のブザービーターが、僕たちのラストの記憶です」
…原作終了直前か。
「3人はともかく、僕はユニホームだったはずだったんですけど…」
そうジャージ姿でぼやく黒子をよそに、何とか復活した母に目線を寄越すと「あるやつ全部」と言われ、4人が首を捻るなか二階へと上がる。
背後からは「黒子っち優勝おめでとうっス!」とか「話があるんだけど、4人ともいいかな?」など聞こえてきた。
そうこうしている内に目的の物の前に着き、どう運ぶか考える。
結局、量が多いので手頃な鞄を使って下りると堅い顔をした母と苦い顔をした4人がいた。
「これがいってたマンガ。“黒子のバスケ”。騙されたと思って読んでみて」
やっぱり色々と此処の事を説明してたんや。
など思いつつ、マンガを机の上に見やすいように出し、一人ずつに手にあったものを渡す。
すると一人、また一人と読み始め顔色がどんどん変わっていく。
…代わり映えのない反応やな。
「マジで一文字一句変わらない…」
感嘆の溜め息をしながらマンガを閉じる高尾。
普段から読んでいるんやろうか、一番速い。
「確かに冗談では無そうだな」
「何時帰れるんスかね…」
他の人も読み終わり感想を述べる。
そりゃ、何時かは帰れると思うけど…
それまでどうするつもりなのだろうか。
すると、うちの心を読んだのか母が口を開く。
「…4人さえよかったら、帰れるようになるまでうちに居てたらいい」
唐突に母が発した声は微かやったが、静まり返ったこの部屋ではよく響く。
周りを見るも皆驚いてはいるが、誰も断ろうとはしない。
まぁ、そうやろな。
いきなり分からない所に放り込まれ、最高のタイミングで差し伸べられた手をつかまない奴はめったにいないだろう。
しかも母は人に好かれやすいタイプや。
ならばうちが出来るのは一つと、何も言わず立ち上がり自分の部屋に戻る途中、階段へと続くドアの前で振り返る。
『居ることについてはうちの口から何も言わない。けど、言っとく。うちバスケ、いや“黒子のバスケ”――――嫌いやから』
誰かが背後で何か言ってる気がしたが、気付いてない振りをして部屋へと駆け込んだ。
〜真っ赤な嘘〜
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