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イズサイトは、塔の存在を改めて実感した。
やっぱりあの塔は幻じゃない、と。
こうなったらもう、塔に入るしかない。
「よし、行くぞ!!」
と気合いを入れたら、腕に抱えていたノーギュを思わずギュッと締めてしまった。
「グエッ!おいこらイズサイト!お前何すんだよ!殺す気か!?」
「あ、わりぃわりぃ。つか、お前って、締めたら苦しいのか?」
「当たり前だろうが!人形をバカにするなよ!人形だってなぁ、締められたら苦しいんだぞ!」
「へぇ、そうなんだ。知らなかった」
意外だという顔をするイズサイトにノーギュは「失礼なやつだな、全く!」とぶつぶつ文句を言っている。
そんなノーギュにごめんごめんと謝りながら、イズサイトはノーギュを地面に下ろす。
「ん?なんで下ろすんだよ?」
「え、だって俺、今からあの塔に行くんだ。お前を連れてくわけには」
「お前、あの塔に入るのか!?」
「?あぁ。そのためにここまで来たんだ。入るよ?」
イズサイトのすごく当然そうに答える顔を見て、ノーギュはニヤリと笑みを浮かべ、体に付いた土埃を払うと、勢いよくイズサイトの肩に飛び乗った。
「おわっ!?何してんだお前!降りろって!」
「オレも行く」
「はぁ!?」
ノーギュの突然の宣言に、イズサイトは思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
「オレも気になるからな。さ、行くぞ!」
言いながら、イズサイトの肩によっこらしょと腰掛け、目の前の塔を指す。
「なんで、お前、ダメだって!危ないだろうが!」
「お前、1人で行こうとしてるんだろ?そっちの方が危ないと思うが?お前魔法使えないだろ?いざとなったらオレ様が助けてやるから、心配すんな☆感謝しろよ、このオレ様が魔法で助けてやるなんて、奇跡だぞ!感謝しろ!敬え!オレ様を崇めろ!!」
「偉そうにしてるけど、お前エリシアいなかったら一般魔法しか使えないじゃねぇか!つか、お前いなくても自分の命くらい守れる!降りろ!」
イズサイトはノーギュのオレ様すごいだろう発言にいつも通り叫びながらツッコむ。
そんなイズサイトなどお構いなしに、ノーギュは足をバタバタさせながらイズサイトの頭をポンポン叩く。
「早く歩け!時間は待ってくれないんだぞ!道が消えたらどうすんだ!ほら、はーやーくー」
「あーもう!分かったよ!分かったから、肩の上で暴れんな!大人しくしてないと森の中にぶん投げるぞ!!」
「…」
途端に大人しくなったノーギュを横目に見ながら、今日何度目か分からないため息をついて、イズサイトは塔に向かって森の道を歩き始めた。

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