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◇序章◇


青い空に清い風。
目に痛いほどの緑の草原には、一人の天使。
服装は白で統一されていて、簡素なものだ。
腰ほどまである銀色の髪が風に踊っている。天使の目は髪と同色。顔はとても整っている。
不意に天使の口が言葉を発した。
「やっと死んだ」
その声は、透き通るように綺麗なものだったが、なんの感情も感じとれない、そんな声だった。
銀色の天使は、無表情に自分の右手を見た。握られている物は、血で真っ赤に汚れた剣。
天使の足元には、胸から大量の生温かい液体を流している屍。その屍の周りには真っ赤な血溜まりができている。
天使は剣を屍の上に無造作に放った。剣は屍の腹の辺りで一度跳ねて血溜まりに沈む。
そこで天使は、初めて満足そうに優しく微笑んだ。そして透明に光る翼を広げ、青い空にむかって飛び去った。
あとに残ったのは、屍と血溜まりと剣と静寂。


青い空に血の臭いを含んだ風。
目に痛いほどの緑の草原には、もう誰もいない。



どこかで、鳥が鳴いた。

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あきゅろす。
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