王者立海生の日常 暴走 あの頃のよもぎは、今よりもずっと引っ込み思案で、 俺みたいな男子が話しかけたらすぐ女友達の背中に隠れたりしてたよな。男子で懐いてたのはひとつ上の三強の先輩らだけ。 そのくせ、いざってときの度胸だけは人一倍ある。 それでいて、 優しい奴だ。いつから俺はそういうお前のことが、 ************************ 「やめないか!切原!!」 ――――――――――――――――――――――――――これは、俺らがまだ立海大附属の中学に入りたての頃の話。 「やめろって切原ッ、俺が悪かったから!」 体育の時間、男女混合サッカーで、ひとりの男子と揉めて、 赤目になった。 遠くの方で先生の怒鳴り声と、女子の悲鳴と、男子の泣き声が聞こえる。 ――――――――――――――――――全部ぜんぶ、潰してやるよ。 今よりもずっと幼くて、感情のコントロールもずっと下手な俺はそう思った。 でも、 「――――――――――――――――だめ、切原くん!ダメだよ!!」 突然その声だけがはっきりと俺の耳に届いて、一人の女の子は俺と男子生徒の間に割って入ってきた 「―――――――――邪魔だッ、お前も潰す!!」 ―――――――――あぁ、誰だか知らねぇけど危ねえぞ 頭の端でそう思ったけど、俺の身体は勝手にその女子生徒に向かって拳を振り上げていた 女子たちの悲鳴が一層大きくなる。次の瞬間、 ――――――――――――――――――――――ドゴッ 「……」 俺は、その女子生徒から顔面に正拳を突きつけられた。 「ご、ごめんね、切原くん!」 意識が飛ばされていく間際、俺はその女子の顔を見た ――――――――――あぁ、あいつ見たことあるな。同じクラスだけど、大人しそうでまだ話したことなかった。確か名前は…… 「草薙……よもぎ…………」 草薙は、今にも泣きそうな顔をしていた。 ――――――――赤目の俺が、怖かったのかな 俺の意識は、そこで途切れた―――――― アントキノボクラ。〜赤也編〜あの時、俺はあいつに出会ったんだ [次へ#] [戻る] |