王者立海生の日常
甘いくらいに
ストイックなまでに勝利に貪欲な彼らは、周りから、そして内部にも畏怖の目で見られることもあった
畏怖、という感情は、勿論尊敬の念から来るものだったが、それは同時に敬遠のもとになることになった
弦一郎がそのいい例で、―――――――もともとそういう性格で、普段からあの調子なのだが―――その厳格な性格と鉄拳制裁は同級生、後輩、先輩を問わず疎まれた
また赤也は、初めてクラスで赤目になったとき、同級生の間で孤立しかけた
本来ひょうきんで明るくても、その赤い目のイメージが払拭できず始めから近付かない生徒も今尚いる
そんなわけで、彼らから離れていった友人も、存在しないわけではないのだ
よもぎの友達の中には、彼女の安否を心配して、
彼らと一緒にいないほうがいい、と助言するものもいた
それでも、よもぎは彼らから離れなかった
と言うより、離れたくなかった
それは、一重に彼らが好きだったから
「………………テニスプレイヤーとしてのあいつらより、自分の大切なひととしてのあいつらを優先したんだな」
海堂がゆっくりよもぎの肩から両手を放して前を向く
よもぎも海堂から視線を反らして、静かに口を開いた
「うん………
皆がテニスしてるのは好き……皆楽しそうだから…
でも怪我しちゃったりとか心配だから……うーん……………やっぱり心配とかさせておいてほしいかな」
皆怪我してもいっつも後回しなんだもん、
と、よもぎは怒ったように言って、しかし嬉しそうに笑った
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