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小説
其の二


「ゴゴゴゴゴォ……」

 辺りに響く聞き慣れない音で「佐々木雪男」、雪男は惑ろむ意識の中うっすら目を開けた。

「……いったい何が?」

 そんな意識のはっきりしない中、雪男はぽつらと呟いた。

 自分の目の前に広がるのは暗闇に包まれた元々は天井や壁、床であったと思われる瓦礫の山。暗くてはっきり分からないがかすかに蛍光灯や社内の横縞のストライプの壁紙が瓦礫の中から目で確認出来るから確かなのだろう。そして、その下には机やイス、パソコン等が原型を止どめず潰されていた。

 たった今までここで仕事をしていたはずなのに……。

 雪男の描く面影は一つも残っていなかった。

「ゴゴゴゴゴォ……」

 辺りには変わらず、何かの音が響いている。

 次第に目は暗闇に慣れ始め、意識も徐々に回復しだし、雪男は先程パソコンに現れた文字を思い出した。

 緊急事態発生ホープシティに爆撃機接近緊急事態発生……。

 あれは本当だったんだ。だとしたら、本当に燐国のブルシティが……?

 ブルシティは確かに好戦的で戦争のための軍事設備や研究所、軍も常に強化訓練を行っているという。この前も他の国が襲われたという話しを聞いた。しかし、こんな小さな街に戦争を仕掛けてくるだろうか?取り立てて何が良いという訳でも無いこの街に。

 雪男にはブルシティが攻撃してくる利点が無い様に思われた。好戦的であっても侵略好きな訳では無い。それがブルシティに対しての認識であった。

 では、ブルシティでなければいったい誰が?

 雪男も真については想像付かなかった。だから一番可能性のあるブルシティ侵略の線も拭えずにいた。

「ゴゴゴゴゴォ……」

 目が暗闇に慣れ始めると同時に社内に新たな光景が広がった。

「み、みんな!」

 そこには瓦礫の下敷きになったターリメック社員達、数名が居た。
わずかに手を出している者、頭から血を流している者、その状態は様々であったが、皆が一様に重軽傷を負っているのは一目瞭然であった。

「おい、みんなぁ!大丈夫か!大丈夫だったら返事を……、クッ」

 雪男の呼び掛けに答える者はいなかった。しかし、今ので分かった事がある。

 大声で響いた雪男自身の身体の痛みと自分も身動き取れないという瓦礫に埋もれている事実である。



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あきゅろす。
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