小説 情報屋「ギル・ジーン」 「チュン、チュチュンチュン……」 外から聞こえる雀の囀りで雪男は目を覚ました。 「ここは?確か、俺は爆撃に巻き込まれて……」 身体をゆっくりと起こして、雪男は辺りを見回した。 そこにはベッドが二つあり、横にはサイドテーブル、その上にはカード式で映るテレビが設置されていた。 雪男自身もそのベッドに横になっており身体の全身、頭、腕、胸、足にそれぞれ包帯が痛々しい程に巻かれていた。 窓を眺めるとそこには慣れ親しんだホープの街が広がっていた。空は晴れ渡り、雲が悠々として流れている。 確か、あの時知らない人の声が聞こえた。その人が助けてくれたのか。 雪男にはそうとしか考え付かなかった。そして、その考えを隣りの男が決定付けた。 「ここは、ホープ病院だよ」 そんな声のする方へ雪男は首を向ける。そこにはベッドに横になっている顔色の悪い男がいた。 黒髪で目は細く、クマを付けその頬は酷く痩せこけていた。 そんな男は不気味な引きつり笑いを浮かべて雪男をじっと見る。そして、男は雪男が運ばれて来た時の事、ターリメック社の事を語り出した。 「お前、あの爆撃に巻き込まれたんだってな〜。 すごかったぜ〜。 血だらけでよ〜。 お前、頭かなり縫ったらしいぜ。 まあ〜、奇跡的に骨は折れて無かった様だがな〜」 「…………………」 雪男はその情報に無言で答えた。事細かな情報は有り難いのだが、こいつからはどこかイヤらしさを感じる。 人の不幸を面白おかしく、舐め回し、しゃぶり尽くし、そして味わい尽くす、そんな雰囲気がひしひしと伝わってくる。 こういう奴とは関わりあいにならない方が良い。 雪男はそう思い、目線を外へとずらした。 それでもその男は構わず、語り出す。 「ターリメック社だかだっけ? あそこで生き残ったのは指折って数えれるくらいでよ〜。 もうその中の何人かは死んだらしいぜ……」 「…………………」 無視しても話しを止めない男に呆れ、雪男はシゲへの思いに更けた。 シゲは、生きてないだろうな。俺の目の前であの、あの、あの社長に撃たれたのだから。 「寂しがる事は無い。みんな一緒だ」 「さあ、一緒に死のう」 「?!お前まだ死んでなかったのか!早く死ね!!」 「ギュゥーン、ギュゥーン、ギュゥーン」 雪男の脳裏に昨日の記憶が駆け巡る。 何で社長があんな事を……。 そのショックは大きかった。 [前へ] [戻る] |