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悪魔も喘ぐ夜
*


「とりあえず」


 靴を脱ぎ、スリッパに履き替えた兄貴は

そう言いながらシーツで両手がふさがって

いる俺の顎に手を添えて唇を塞いできた。


 それがあまりに当たり前みたいな顔でさ

れたから、反応が遅れた。


 昨夜の兄貴の言葉がフラッシュバックす

る。


“僕はちゃんと言いましたよ。

 僕が賭けに勝ったら、駆は僕が望む時に

 体を開くこと、と”


“解ってないですね…。

 『僕が望む時』が夜、自室でだけなんて

 限らないんですよ?

 それは浴室かもしれないし、野外かもし

 れないし、誰かの見ている前かもしれな

 い”


 バッ!

 慌てて体を離して言い放つ。


「こんなところでなんて、やっぱダメだ

 ろ!?」


 睨むが声が上擦ってカッコつかない。


「ちゃんと覚えているようですね。

 安心しました。

 今のはただの“ただいま”のキスです

 よ」


 ニッコリ笑って兄貴の手が俺の肩に触れ

た。

 その手が軽く俺の肩を揉むのが余計に憎

らしさを募らせる。


「そんな…毎晩なんて俺の体がもたないっ

 てのっ!」


 だから思わず牽制を込めて言い訳がまし

い一言を返してしまう。





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