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悪魔も喘ぐ夜
*


 …だから、気づかなかったんだ。

 快楽に追うのに必死で、その部屋にもう一

人の影が入ってきたことに。

 その交わりをじっと見つめる人影に。



「…随分と堂々と覗くんですね。

 混じりたいって言っても、駆には指一本

 触れさせませんよ?」


 ただ気持ちよくて腰を揺すっていた俺

は、急に腰を止めた兄貴の言葉が誰に向け

られたものなのか一瞬理解できなかった。


 な…に…?

 兄貴は何を言っ…


 荒い息を吐き出しながら兄貴の視線を向

かう先を見て、凍りついた。


 麗…っ!?


 眠っていたのに、目が覚めてしまったの

かパジャマ姿の麗がそこにいた。

 唇の色が変わるほど噛みしめて、握りし

めた拳が力を入れ過ぎて震えている。


「お兄ちゃん…なんで隣にいてくれなかっ

 たの…?

 ぼくと寝るより、兄さんのほうがよかっ

 た…?」 


 絞り出す声が震えていた。

 罪悪感がこれでもかという大波になって

押し寄せる。


「そうじゃないっ!

 そうじゃ、なくて…っ」


 言葉が続かない。


 気持ちいいと思ってしまった。

 兄貴に貫かれて、もっとと望んでしまっ

た。

 きっかけはなんであれ、それは事実で。





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あきゅろす。
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