悪魔も喘ぐ夜
*
「おはよぉ、お兄ちゃん…」
麗は寝起きの声で微笑んで、唇に触れて
きた。
「おはよ」
避ける必要ももう感じなくて、そのキス
を受け入れて麗の髪を指先で梳いた。
「今ね、お兄ちゃんの夢みてた。
もう少し見てたかったけど…、やっぱり
現実のお兄ちゃんもいいね」
えへへ、と無邪気に笑う。
その顔はよく知っているはずなのに、弟
として無邪気なだけに映っていた時間には
もう戻らない。
「せっかくのGWなのに、なんにも出来て
ないな…」
旅行に行かない麗をどこかに遊びに連れ
て行ってやろうと思っていたのに、結局ど
こにも連れて行ってやれていない。
こんな体じゃ、きっと明日一日遊び回る
のも難しいだろう。
「なんにも?大収穫だよ、ぼくは。
お兄ちゃんにちゃんと触れられて、
ぼくは今すっごく幸せ」
そう言って笑う麗は、やはりもう弟の顔
ではないような気がする。
どこで狂ったのか…。
その歯車を戻せるなら、なんでもするの
に…。
俺がそんなことを思っているとはきっと
露知らず、髪を撫でられながら麗は気持ち
よさそうに目を細めた。
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