悪魔も喘ぐ夜
*
何がそんなに麗を駆り立てるのだろう。
孤独か、不安か…。
これだけ愛くるしい容姿で生まれて、何
不自由なく育って…それなのに何故求める
対象が俺なんだ…。
今までだって、きっとこれからだって、
麗を愛する人間はいくらでもいるだろう。
それなのに、何故…。
「麗…俺は何処にも行かない。
麗をおいて何処にも行かない。
何がそんなに不安なんだ…?」
その目を見つめて静かに尋ねる。
しかし麗は迷いあぐねたであろう末に首
を横に振った。
「わかんない…。
でも不安なんだ…」
「…もっといろんなものに触れてごらん。
いろんなものを知ってごらん。
世界が広がれば、その不安は消えるよ」
だから言い聞かせる。
世界はそんなに怖くないと。
闇雲に怖がるだけが身を守る手段ではな
いと。
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