サソリとデイダラ6
犯罪組織、暁としての暮らしに大分慣れてきたある日の事。
怒涛の如く任務続きだったオイラ達にリーダーが休暇をくれた。任務内容は尾獣関連の情報集めが主流だったものの、当然血なまぐさい任もあったから丁度休みが欲しかった所だ、うん。
「うーん、ゴロゴロ出来るってサイコーだなぁー」
このあいだの任務先から一番近くにあった、各里にあちこちある暁のアジトの一つに今オイラと旦那と二人で居る。メンバー全員が集まる事は皆無だけどそれぐらい人が居てもいいくらいの広いアジトだ。
そこのリビングのソファで言葉通りごろ寝をするオイラ。とは言っても、人に気付かれない場所に建っているから気持ちのいい日の光ってのは全然ないんだけどな。
まあ、こんな暗くコソコソしてる組織にはお似合いってか?
「…にしても、旦那って本当に孤立主義だよな…うん」
その旦那は、この広いアジトの一つの個室でお約束の傀儡弄りをしている(と思う。実際には見てないから)。
流石のオイラだってあそこまでのめり込めねーよ…。やっぱ旦那…うん、凄い。
「別にコソコソしなくても、ここでやりゃーいいのに」
そんな事言っても分かり切ってるけどよ、…旦那が自分の時間を邪魔されるの嫌な事。
あと待ち待たせにはまさしく頑固オヤジ並に五月蝿いし、オイラが何か失敗した時には幻滅の眼差しで溜め息連発するし…、オイラの芸術は否定するし。あー、そんな事思い出してたら腹立ってきた。
だけどたまに褒めてくれるんだよな、若干皮肉に聞こえる時もあるけど。それに…あの綺麗な顔で笑ってくれるとヘンに嬉しいし。未だにあの笑顔には慣れねー、いつも密かにドキッとする…うん。
暁に入ってから今まで、ずっと旦那の事を見てきた。最初の印象は最悪だったけど、一緒に行動して知らなかった部分も見えてきて…正直、旦那といると楽しい…のかも。
がばっ!
「オイラっ…たのっ楽しいのか、うんんッ!?」
ソファから勢いよく起き上がってアホみたいに自分に問い掛ける。頬を両手で触れば、気持ちちょっと熱い…。
どうしよう、この頃オイラ旦那の事しか考えてねーかも、うん…。
「あーーーもうっ!」
ぽかぽかぽか
「何考えてんだよオイラッ!
よし!気分転換に昼メシ作るぞ昼メシ、うん!べ、別に旦那のためとかそんなんじゃねーよ?てか、オイラが料理も作れるって驚かせてやるんだよ!旦那にアッと言わせんだ、この前のリベンジだ、うん…!
と、とにかくまずは食料チェック!」
冷蔵庫には一通りの食料はあった。暁の下っ端部下が管理してるから当たり前か。
へへー、伊達に今まで一人でやってきてねーんだぜ!
丁度あったエプロンを身につけてさくさくっと料理を作っていくオイラ。次第に部屋内に美味そうな匂いが満ちていった。
「出来たーっ!うんうん、久々の割には上出来だ!」
テーブルに料理を盛りつけた皿の数々がずらりと並ぶ。それを見ながらオイラは腕を組んで満足げにうんうんと頷いた。
「じゃ、旦那呼んでくるかな」
旦那驚くぞーきっと♪
オイラはてこてこと旦那のいる部屋へと足を運ぶ。
コン、コン
「…なんだ」
ガチャッ
「旦那、昼メシの用意が出来たぜー、うん!」
「……わりぃ、オレいらねぇ」
「えー?なんでだよ、せっかく作ってやったのに…このオイラがっ!」
「…食欲が、ねぇんだ」
バァーーンッ!!
「…ッ!?」
「だーから旦那はいつまでもそんな小っこいんだよ!うん!ちゃんと食べろォ!」
「…壁叩いて脅すなよ。食べるも食べまいもオレの勝手だろうが…」
「ダメだァ、うん!今持ってくるから。この部屋から出なくてもいいからちゃんと食うこと!行儀悪いけど、傀儡弄ってて食いながらでも今回は許す!」
オイラはそうビシッと指差したあとズンズンと足音を立てながらダイニングへと向かった。
「お、おい…!…っ…、」
「さあー旦那!しっかり食えよ、うん♪あとで皿取りに来るからな」
「…オレ、本当に…」
「オイラさ、前から心配してたんだぞ?旦那いつも顔色あんまり良くないし、飯食ってるとこ全然見ねーし。
生理欲求無視する程傀儡に夢中になるのは、そりゃあオイラの目から見てもすげーけど…やっぱ体あっての事だからよ」
「………」
「オイラは創作活動に支障入れたくねーからこうやって食事はちゃんと摂ってるんだ、うん!
大丈夫、味は保証するからさ!」
そう言ってニカニカと笑うオイラ。それでも、旦那の顔が晴れなかった事にオイラは気付けなかった。
オイラは旦那の居る部屋を後にする。扉を閉めたタイミングできゅぅ〜…と腹が鳴ってしまった事に苦笑いをしながら、ダイニングへと戻った。
「…馬鹿だな、アイツ。
オレがこんな体である事を、少しも疑っちゃいねぇ…。
本当に……馬鹿な奴だ…」
皿の縁を指でなぞれば摩擦音がきゅう、と鳴る。
しばらくのあいだ旦那はオイラの作った料理を、どこか寂しげに見下ろしていた。
どこぞの母ちゃんですかデイたんは。
料理が出来るという意外性に萌える。
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