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ミケ
飼ってる猫が人間には見えないものを見つめていたりして、オオッと思うことありませんか?
僕の小学校の頃飼ってた猫が特にそうで、よく何もない壁だとか天井だとかを睨みつけていました。

ミケという名前の三毛猫でしたが、もらい猫だったので避妊が遅れて獣医に連れて行った時にはもうお腹に赤ちゃんがいるということでした。
可哀相でしたが、まだ潰せるということなので御願いしました。
去勢されたあとのミケは空気が抜けたように元気がありませんでした。
ご飯に呼んでも上の空で、目もどこかうつろでした。
しばらくはしかたないと家族はさばさばしていましたが、僕は幼かったのでミケに感情移入し、彼女が心配でなりませんでした。
そしてよく気をつけて見ていたある夜、僕はコタツのしたにうずくまっていたミケが何かを賢明に舐めているのを見たのです。

僕もコタツに潜りこんでみるとそれは赤い肉の塊のように見えました。
しかし、ミケが唸って威嚇したので慌てて顔を引っ込めました。
そしてもう一度そっと覗いてみると、今度は自分の毛繕いをしており肉のような物も何も見当たりませんでした。
僕はその夜寝ながら思いました。
あれはきっと産まれてくるはずだったミケの赤ん坊なのだろう。
ミケはお母さんになりたかったんだなあ、と。

次の朝目が覚めると僕は一番にミケの所に行きました。
するとミケはまた赤い物を舐めています。
それはそれはいとおしそうに舐めているのです。

「ミケ。ミケ。ゴメンな。ゴメンな」

僕は涙がこぼれて止まりませんでした。
それはいつのまに食いちぎったのか、毛がすっかり抜け落ちたミケの尾先でした。

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あきゅろす。
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