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キャンディ×2
惚れた弱み?

同僚を労い、心の中で自分も労い、今日も蒼は無事に職員室を後にする。

すると保健室から、いつもなら体育館で部活動に励んでいる筈の生徒が現れた。
心配した蒼は彼女に駆け寄り声を掛ける。


「大牟田さん、大丈夫なの?」
「あ、はい。軽い突き指ですから」
「無理しないでね。試合近いんでしょ」


試合のことを把握されていたのが意外だったのか、生徒は少し驚いたような顔をする。
しかしすぐに笑顔になって、優しく面倒見の良い担任に頭を下げた。


「ありがとうございます!」
「ふふ、頑張ってね」


廊下の奥へと小走りで消えていく背中を見送る蒼。
その表情はとても穏やかだ。




「廻ちゃん、ちょー…かっわいいですよねぇ」


まるで聖母の如く美しく辺りを照らしていた蒼の微笑みは、保健室の扉を開けた途端一瞬にして崩れ去る。


「…変なことしてないですよね」
「まっさかぁ」


蜜瑠はそう笑いのけると、定位置に立った蒼の身体を引き寄せた。
不機嫌ながらも引き剥がそうとはしない蒼を見て、蜜瑠が調子に乗らない訳がない。


「蒼先生ちゅーして下さい、ちゅー」
「えぇ…?」
「ちゅーう!ちゅーう!」


街を歩けば男がわんさかついて来るような魅力と色気に満ち溢れた容姿に反して、蒼の前での蜜瑠はとても子供っぽい。
そんな、自分だけに見せる一面にどこかくすぐったさを覚え、
(折れてやってもいいかな)
などと蒼が考えていた時だった。


「廻ちゃんのさくらんぼみたいな唇見てたらもームラムラしちゃって!早くぅ」


せっかく緩みかけていた蒼の眉間の皺が、先程より一層深くなる。
それに気付く様子もなく甘えてすり寄る額に、蒼は渾身のデコピンを食らわせた。


「いったあぁい!」
「保健室には湿布も氷嚢もありますから安心です」


備品棚につかつかと歩み寄り、氷も何も入っていない氷嚢を悶絶する蜜瑠に投げつける。


「蒼先生の意地悪!ちゅーして下さいよぉ!」
「……」


蒼は黙ったまま、傍らに飾ってあったぬいぐるみの口を蜜瑠のそれに押し当てる。
すると蜜瑠は首を横に振って、請うような眼差しを蒼に向けた。


「蒼先生のちゅーじゃなきゃ嫌ぁ…」


どこまでも奔放で甘えん坊な恋人。
そしてそんな彼女のおねだりに図らずも怯んでしまった自分に、蒼は頭を抱えた。




参りました、なんて言えない。




(お願い蒼先生ぇ)
(……はぁ)








※好みの生徒の名前は100%把握している保健医。

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あきゅろす。
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