キャンディ×2
いつもの保健室。
校庭で生徒達が体育の授業に汗を流す姿を、蜜瑠はにこやかに眺めていた。
無邪気な声、そして爽やかな笑顔。
微笑ましい。実に可愛らしい。
「だけど安心して下さい!一番可愛いのは蒼先生ですから!」
「…はぁ」
ストローから口を離し、蒼は突然振り向いた保健室の主に怪訝そうな表情を示す。
「反応薄いですよぅ」
「唐突過ぎるんです。蜜瑠先生たった今生徒達の体育着姿に鼻の下伸ばしてたばかりじゃないですか」
カフェオレを音を立てて飲み干すと、蒼は空になった紙パックをゴミ箱に投げ入れた。
几帳面な清掃員のお陰で、ゴミ箱の場所はいつも変わらない。
その為、デスクの横が定位置である蒼のシュートは、日に日に精度を増していた。
「やぁん、蒼先生ヤキモチですかぁ?」
「ポジティブ思考も行き過ぎると戯言にしか聞こえませんね」
流暢なイヤミも何のその。蜜瑠は腰掛けたままのキャスターチェアを転がし、デスクに手をついて立つ蒼の胸に真っ直ぐ飛び込んだ。
衝撃によろけそうになるのを蒼は何とかこらえるも、押し返そうと蜜瑠の肩に手を掛けた。
「…離して」
「や」
蜜瑠はクスクスと笑いながら、あろうことか蒼のワイシャツの裾を引っ張り出した。
「ちょっと蜜瑠先生!」
「何もしません!ブラチェックするだけ!」
「おかしいでしょそれ!」
しかしこんな所だけ器用な蜜瑠は、比較的あっさりとワイシャツの下に身に着けたキャミソールまでも捲り上げてしまう。
抵抗虚しく、蒼のブラジャーは色惚け保健医の前にお目見えすることになった。
「新しいの買ったんですねぇ。可愛い」
満足げに微笑んだ蜜瑠は、柔らかな胸元を包む薄いブルーの布地の真下に口付ける。
この不意打ちに、蒼は不覚にも僅かに身体を震わせた。
「サイズ、合わなくなって来ちゃいましたもんねぇ」
「誰のせいだと…」
成長期をとっくに過ぎたというのに、近頃蒼のバストはサイズアップを見せた。
そしてそれに際して行った下着の買い換えは、彼女にとって痛い出費であった。
しかし原因を作った張本人は呑気なもので、蒼は溜め息を吐いて視線を逸らす。
「あたしです。だって蒼先生にはぁ、あたししか触っちゃいけないんですよ」
白い身体に愛おしそうに頬ずりすると、蜜瑠の手によってごく丁重に服は元に戻される。
その手つきはまるで、宝物を大切にしまい込んでいるかのようだ。
「抱き締めるのもあたしだけ、キスするのもあたしだけ、おっぱい揉むのもあたしだけ」
恥ずかしげもない台詞に、蒼は実に居づらそうに視線を泳がせる。
「セックスするのも…」
「いい加減にして下さい!」
頬を真っ赤に染めて遂に声を荒げた蒼は、相手の両肩を掴んだ手に力を込める。
しかし蜜瑠はびくともせず、それどころか顔だけを上げて笑ってみせた。
「可愛い。だぁい好き。蒼先生」
抱き付いたままこちらを見上げるキラキラとした瞳に、蒼は思わず言葉を失ってしまう。
それを良いことに蜜瑠は、甘く魅惑的な香りに誘われるように再び蒼の胸に顔をうずめた。
My Sweet Sweet Honey!
「しょうがない人ですね」
夢にまで見る程にいつも恋い焦がれている指が、蜜瑠の髪をそっと撫でる。
蜜瑠は心底嬉しそうに微笑んで、その感触に酔いしれるように目を閉じた。
※ある日の午後、保健室での一幕。
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