拍手ログ 女子校とリップ。 人通りのない通学路に、冷たく乾いた風が吹き抜ける。 「しまった…リップ忘れて来たぁ」 先程から私の横でポケットを探っていた廻が呟いた。 「貸してあげるわよ」 「あたしは彼じゃなきゃ…サベックスじゃなきゃ駄目なの!」 大袈裟に言ってのけると、両頬に手を当て首を振る。 その口調と仕草はさながらB級ドラマの女優のようだ。 「我が儘言わないの」 「だってーあれが一番ボクの唇に馴染むんだよ」 廻は僅かにかさついた唇をなぞる。 ふと思い付いた私は、その手を取って勢いよく引き寄せた。 「…な、に?」 それには答えず、ただ一度微笑んでから口付ける。 自らの唇に乗せた淡いピンクのグロスを、彼女に分け与えるようにじっくりと。 「一番馴染むのはこっちでしょ?」 「…ッはぁ、妙なトコに嫉妬しないでよ」 頬を赤らめて視線を逸らす彼女の唇は、目論み通り私のそれと同じ色に染まっていた。 (貴女の一番は誰にも何にも譲らない) ※廻はリップクリーム、絹華はグロス。 [戻る] |