アンタとオレの関係
密談
俺は今、不思議で不思議でたまりません。
『なんで先に競技を決めたハズなのに身体検査の結果を報告しなきゃなんないんスか』
相手はさっきの団長さん。
「さっきも言ったけど、ウェイトが関わる競技があるからだよ」
『たとえば?』
「綱引きとか」
『あとは?』
「騎馬戦とか」
ふーん。
さて、なんで俺がこんなに不満そうにしているかと言いますと………
「それにしても佐倉遼くん! 君、軽すぎだよ!!」
『軽い軽い連呼しないでくださいよ! 俺だってもっと筋肉つけて男らしい体になりたいやい!』
「175cmあるのに体重56kgとは………実にバランスが悪い!!」
『それはあくまで力の話でしょ!? だいたい、体育祭は力技だけじゃないじゃん。俺だって、走るのなら大得意だもん!!』
頭固いんじゃないの? この団長!
そこに割って入る裕行会長。
「二人ともそのへんにしときなよ。この体育祭は優勝クラスに賞金が出るから、他のクラスはかなり真剣にやってるよ?」
それを聞いた途端、小声になり、身を寄せ合う俺と団長。
さながら密談の真っ最中。
「まぁ体型に関してはこのへんにしておくが………力で劣るぶん、君にはスピードで勝負してもらうよ?」
『…………スピードと脚力には多いに自信有りです』
「それなら、リレーと障害物競走がいいかな」
『任せてください! 他にも俺の脚力が活かせる競技があったら、いくらでも俺を使ってください』
「頼もしいよ、佐倉遼くん! 既に各人の競技は決定しているが、今からでも調整はきく。君に期待しているよ!!」
『はい!!!』
さっきまで大声で言い合いをしていたのに、【賞金】の2文字を聞いた瞬間、俺は団長の優秀な駒になることを自ら望み、また、団長の俺の扱いも急に丁寧になりました。
お金の力って凄いね!!
「金持ちの子息が多いはずのこの学園の体育祭に、なんで賞金が必要なのかと最初のうちは不思議だったよな」
そう、夾が裕行に話しかける。
「そうだね。体育祭などやる気のない生徒がほとんどだから、彼らのやる気を少しでも煽るのが本来の目的のハズなんだけど………」
「まさかやる気はあるのに仲違いしてる奴らを協力体勢にする効果があるとはな」
「初代の理事長もなかなか考えていたってことだね」
密談を続けている俺たちを見ていた夾と裕行会長のこんな会話など、俺たちは知る由もなかった。
◆◇
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