アンタとオレの関係
地獄のフライト
着陸まで、あと20分。
この半日は、俺にとってはプチ地獄でした。
悠樹にぃが一人暮らしをしているマンションに寄ってから、空港に向かった俺と悠樹にぃ。
空港までの時間に寝ておけと言われ、あまり眠くないなーなんて思いながらも熟睡してしまった。
で、気付いたら空港。
出国手続きを済ませ、空港内のお店を見て回ったところまでは良かった。
飛行機に乗り、離陸する時って楽しいよねーなんてわくわくしていたら、俺の膝の上に、英単の本が置かれた。
「離陸するまでに、こっからここまで覚えろ。後でテストするから」
そう言ってから、兄貴は隣で、静かに読書を始めた。
因みに、ここは三人席。
窓際に俺が座り、兄貴は真ん中。そして、一番通路側は空席。
つまり、誰かに邪魔される心配もなく、ここで心ゆくまで勉強が出来るというわけだ。
このあたりから、嫌な予感はしてたんだよね・・・・・・。
離陸するときは、さすがに外を眺めていても怒られなかったけれど、飛行機が上昇をやめてからの兄貴は凄かった。
十数時間のフライトの間、食事の時間と照明が暗くなる時以外は勉強、勉強、勉強。
照明が暗くなったときは、疲れてすぐにでも寝たかったのに、「エコノミー症候群になるから、少し散歩しに行こう」「雲の上だから、星が綺麗に見えるぞ」だとか言って、30分ぐらい、席から立たされていたし。
でも、そのおかげで、席に戻ってからは熟睡。
飛行機って、普段はなかなか寝られないのに、今回はさすがにすぐに寝られた。
で、起きたら起きたでまた勉強。
着陸の20分前になった今、折角今日は晴れているから、上空からフランスの町を見ようということになり、勉強道具を全て片付けて、今は椅子にぐったりともたれている。
『課題の半分が終わってしまった・・・・・・』
しかも、苦手分野。
「良かったな。残りの半分は、日本への帰り道でやるか?」
『うん、そうする。あとさあ、それ以外のはあっちについてから教えて?』
「・・・・・・教えられる余裕があればいいんだけど、な」
『ん? どういうこと?』
「遼、お前、みんなに会うの久しぶりだろう?」
『うん』
「俺もお前も、しばらくは大変だぞ? 特に、兄貴と父さん・・・・・・」
『あ・・・・・・』
あの濃い人たちを忘れてたよ。
◆◇
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