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短編集
プロローグ編
「はあ、はあ!」
薄ぐらい路地を全力で疾走する。
立ち止まってはいけない。
でないと、直ぐに追い付かれる。
「はあ、はあ!」
なんとしても振り切らなくてはいけない。
奴らは獣だ。少し身を隠したくらいじゃ、直ぐにばれて捕まってしまう。
「はあ、はあ!」
自分でも驚くぐらいのスピードで走り抜ける。
さっきから奴らの足音が聞こえなくなった。
逃げ切ったのか?
いや、油断はできない。
足が止まったところを一気に襲われるかもしれない。なにより、この足は一度止まればもう動くことはないだろう。
スピードを落とさずに曲がると、目の前に煌めくネオンと溢れる人込みが見えた。あそこまで行けば大丈夫だ。あの中に紛れれば、奴らも追ってこれないだろう。
出口が見えた途端に足が縺れだす。
頑張れ!あと少し、あと少しで自由を!
躓きそうになる足を必死に踏ん張り、最後の力を振り絞って駆け出す。
そして、光に踏み出そうとした瞬間、目の前が真っ黒になった・・・・。








「うおっしゃああああ!!捕まえた!これで晩飯getだぜ!!」
「やりましたね、礼偉季(れいき)さん!」
俺の名前は白峰礼偉季(しらみねれいき)、私立探偵だ。今日も俺は依頼を受け、この東京の町を走り回っていた。そして、その依頼というのが
「いや〜、でもほんと、お前がいて大助かりだぜ美花」
そう言って、俺は戦利品を頭上に掲げた。俺の手には、さっきやっとの思いで捕まえたブツが、袋に入りながら暴れている。しかし観念したのか、最後の一声のあと、大人しくなった。
「にゃ〜お」
そう猫探しだ。
「へへ、私も、お役に立てて嬉しいです」
俺が声を掛けると、一人の少女が舞い降りて来た。
彼女の名前は渡瀬美花。空から来たことを踏まえると、そう彼女、美花は普通の人間じゃない。正確に言えば生きた人ではない。美花は、俺が関わったとある事件から、俺に取り付いている霊なのだ。
ちなみに、周りの行き交う人々は怪訝な顔をして通り過ぎて行く。それもそのはず、普通の人間には美花のことは見えない。俺が一人で話している様に見えているのだろう。
俺は居心地が悪くなる前に退散することにした。
猫が入った袋を担いで歩き出した俺の横を、美花が宙に浮きながら並走する。
「近頃は依頼も来るようになったし、万々歳ですね♪」
「殆ど美花のお陰だけどな」
それに気がついたのは偶然だった。今日みたいな猫探しの依頼が来たとき。対象を見失った俺に、調度側にいた美花が、俺をナビゲートしてくれたお陰で猫を捕まえる事が出来た。美花にとっては壁の向こうに逃げても壁を抜けられるし、路地に逃げても上から見たら一発だった。
以来、美花がナビゲートして、俺が捕まえるパターンで、今まで負け無しである。
「さあて、帰ったら何食おうかな〜」
煌めくネオンを一瞥しながら、俺と美花は事務所に向かう。その事務所にとんでもない依頼が待っているともしらずに・・・

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あきゅろす。
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