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短編集
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「ここがその浜辺です」

彼女に案内され、屋敷の裏を下って行くと目の前に広い砂浜が現れた。 だが人影は全く無く、ただ波が静かに押し寄せるのみ。
ふと、道の端に目をやると手作りの立ち入り禁止の看板があった。

「で、その模様ってのは?」

「今日出た分はもう島の人が消してしまいました。
いつもその辺からここら辺まで現れるんです」

彼女は俺から少し右横ぐらいから五mぐらい左に進んで止まった。その上に拾った棒で後を着けながら。

「ここまでいつも、横一列にスーって出来てるんです」

「ふ〜む。その模様を撮った写真とかないかな?」

「それなら家に。すみません、さっき見せるべきでしたね。取って来ます!」

彼女はそう言うと屋敷の方へ走って行った。
その間に俺は浜辺を怪しいところが無いか確認する。 これといって不思議な所はない。
現れたであろう辺りを少し手で掘ってみるが何かが埋められた跡も無かった。

(人為的な痕跡が見当たらないとすると、やっぱ“あれ”がらみってことか)

俺が下を向いて考えていると、彼女が屋敷の方から走って来た。

「お待たせしました!これです」

写真を受け取る。なるほど、謎の模様が波打ち際にきれいに横一列に並んでいる。
だが、俺はその写真に違和感を覚えた。
何かがこの現場と違う気がする。

「この写真は何時撮られたんだ?」

「えっと、たしか一昨日の午前四時頃です。確か海が満潮の時だったから、時間も大体あってるはずです」

・・・・なるほどなるほど。

「あの、それで、何か解りましたか?」

「いや・・・・やはり現物を見ないことにはなんともな」

「そうですか・・・」

その時、屋敷の方から彼女を呼ぶ声がした。

「あ、お父さんが帰ってきたんだ」

「なら、一端戻ろう。今ここで解ることはもうない」
「はい」

俺達は屋敷への道を戻っていった。 俺はその時一人の女の子が浜辺の端からこちらを見ているのに気がついた。

(島の子たちは、怖がって近付かなかったんじゃないのか)

俺がそのことを聞こうと前を向くと、燐はもう裏口まで着いていた。彼女は気付いてないようだ。仕方なく俺も後を追う。
顔を向けると、まだ女の子はこっちを見ていた。


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あきゅろす。
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