いただいたSS
和泉さんから
幸せを感じるのはどんな時?
 いつだったか友達との会話でそんな話題になった。
 考えていると「あんたはいいの。どうせ彼氏と一緒の時でしょ。ごちそーさま」と流されてしまった。もちろん否定はしないけど。
 でも。

「すっきりしないんだよねえ……」

「何がだ?」

「え。あー、あたし声に出してた?」

 ふいに耳に飛び込んできた声で我に返り、あたしは隣を歩く人物を振り仰いだ。友人――紅助は呆れたように溜め息をつく。

「出してた。……で?」

「んー、独り言。考え事してただけー」

「あっそ」

 やれやれと言いたげに肩をすくめた紅助は、また前方に視線を戻した。あたしも思考を切り替えて同じように前を向けば、目的地のファーストフード店が見えてきた。
 ちょうど帰りの時間が重なったしお腹も減ってたから、久しぶりに寄っていくことになったのだ。

「二人だけって久しぶりだね」

「そういえばそうだったな」

「最近は双子も一緒だったしねー」

 あはは、と笑って自動ドアをくぐろうとした時。

「じゃあ今回も例に漏れずってことで」

「ご一緒させてもらおうかな」

 聞き慣れた声と共に首に回された腕に、あたしと紅助は一瞬目を丸くすると、次いであたしは笑い出し、紅助は二度目の溜め息をついたのだった。

 五分後――あたしは一足先に四人分の席を確保して、三人が来るのを待っていた。レジ前で何やら言い合いをしていたからもう少しかかるだろうか。
 オレンジジュースを飲みながら待っていると、周囲のざわめきが大きくなった。
 三人が来たのだろう。見なくても分かる。もう慣れたけれど、見目の良い奴らと一緒だと少し憂鬱だ。

「お待たせー」

「紅ちゃんが渋るから遅くなったんだよ」

 明るい響と奏の声を聞きながら紅助を見れば、不機嫌な顔でテーブルに肘をついている。

「何があったわけ?」

 想像はついたけど敢えて訊いてみる。

「……何で僕が奢らなくちゃいけないんだ」

 やっぱり。
 独り言のように呟くのを聞いて、あたしは内心吹き出した。
 双子のトレイを見ると、ハンバーガーのセットにいくつかのサイドメニューまで乗っている。もちろん二人それぞれに。
 ……少しは遠慮という言葉を教えた方がいいかな。
 心の中で紅助に手を合わせながらポテトをつまむ。
 響と奏は、紅助の機嫌を直そうと色々話しかけているが、なかなか効果はないようだ。でも、きっと最終的に紅助が折れてくれることは分かっているから放っておくことにしよう。

「これも友情ね」

「何がだよ」

 つい口に出して呟くと、すかさず三人揃ってそう切り返してきた。
 それが余りにも息ピッタリだったから、今度は四人で笑い出す。
 ――そこであたしは気付いた。
 
 幸せを感じるのはどんな時?

 その問いの答えに感じたもの。そう……足りなかったんだ。
 彼と一緒の時間はもちろん幸せ。
 でも、大事な家族と友達とこうして笑い合える時間もまた幸せなのだと、今なら迷いなく答えられる。
 ようやくすっきりとした心で、あたしはまた微笑んだ

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