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BL小説群
Because I am in the side , you may cry.


一体いつ、どこで、何を間違ってしまったのだろう。

『まさき!』

同じ時に母の腹に宿り、同じ時に生まれてきた、オレの片割れ。
ほんの数分だけ、オレより先に生まれてきた、双子の兄。
オレよりもずっとしっかりとしていて、いつもオレより先を歩く、憧憬の具現。

『あんまりはしるなよ。ころぶぞ』
『ん! じゃあ、てぇつなご!!』

母は優しくて。
父は厳しくて。
オレ達はいつも、良い子でいなければいけなかった。
片割れほど要領の良くなかったオレは、いつも泣いてばかりで。
何もかもが上手くできなくて。
悔しくて。
そのたびに、オレは片割れにしがみついて泣いたのだ。

『う〜…』
『……』
『…まさきぃ…』
『ん?』
『…おれ…だめなこ?』

いつも抱きとめて、抱きしめて、頭をなでてくれたのは、誰よりも近くにいた愛しい存在。

『いいや。おれはゆうきがすきだから、ゆうきがだめだなんておもわない。がんばってるゆうき、おれはだいすきだよ』

【好き】という言葉に、深い意味なんてなかった頃。
オレ達はある意味自由で、ある意味不自由だった。

――父と母がいなくなったのはこの頃。
  兄弟が離れてしまったのもこの頃。
  その後に再会した片割れは、オレの知らない……――






一体いつ、どこで、何を間違ってしまったのだろう。






『俺は、お前を弟だなんて思わねぇ』

オレののばした手を振り払ってそう言い放ったのは、離れ離れになった時からずいぶんと育った、オレの片割れ。
苦しげに眉をひそめて、忌々しげに唇を歪めて。
オレの知らない顔をしていたのは、オレの知らない時を過ごした、オレのたった一人の片割れ。

『――っまさ…』
『寄るんじゃねぇよ』

冷やかに投げられた視線は、オレを殺したかったのか……。

『征樹っ、久しぶりに会ったのにその言いぐさはっ!!』
『うるせえ。兄貴達には関係ねぇよ……』

何が彼を変えてしまったのだろう。
それとも、オレが変わってしまったのだろうか。
オレの何が彼を苛立たせ、オレの何が彼を傷つけるのだろう。

オレの片割れが夜遅くに帰ってくるようになったのは、それから少しして。
次の日近く、もしくは日をまたいでから帰ってきて、音もなく部屋に滑り込み眠りにつく。
朝は、オレよりも早く起きて学校へ行く。
彼の中でオレは、空気以下の存在だったのだろう。

彼はオレが嫌いで、彼がオレを憎んでいるのだと、思い込んでいた……。

彼が遅くに帰ってくる日は、兄二人がずっと起きていたのをよく覚えている。
(何だかんだと言いながら、彼は兄達には心を許していたみたいだ)
その日はただなんとなく――本当に、何があったわけでもなく――目が覚めて、オレはリビングへと足を向けた。
玄関の扉が開く音がして、オレの片割れを兄二人が咎める声がして。

『なぁ…どうしたらいいんだよ』

その声に自嘲しつつ答える彼の声が、今も耳に残っている。

『俺は、アイツを弟だとは――兄弟だとか、家族だとか、そんな風にも――思えねぇ』

一瞬、心臓が凍りつく。

『俺は、アイツを愛してんだ』

ならどうして、と兄達が言う声がする。
愛しているなら何故、遠ざけるのか。

『そうじゃねぇよ……』

紡がれた言葉は…――。

『俺がアイツに欲情するなんて、おかしいだろ?』

オレの心に、そして、彼とオレの関係に波紋を残すのに十分だった。

時が止まり。
空気が留まり。
色を失くし。
音を亡くし。
そしてただ、オレの片割れの言葉だけが朗々と……――。

『俺は悠樹を抱きたくて。俺は悠樹の全てが欲しくて。そんな俺の愛は[可笑しい]だろう?』

静寂の中で響いた。










小さい頃から何も変わっていない。
変わったのは、大切になりすぎたって事だけで……。
小さい頃からお互いに言い合っていた約束の言葉は、今も変わらない。










Because I am in the side,you may cry.

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あきゅろす。
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