[通常モード] [URL送信]

好きなんだけど!
クソホスト



テーブルに並べられた料理の中、シュウマイに箸を伸ばす俺の後ろから、翔が抱きついてくる


身体があったかくて、酔い始めた俺にはじんわりと心地好かった。
しばらくしたら、暑くなってウザくなってくるんだろうけど




「俺にもちょーだい」

「ん」

「うまー」




翔は拗ねてたのもどこへやら。
俺の左手を触りながらジョッキを空にする


やっぱ早い。
有村なら5回ぐらい死んでるはずだ




「……あ、ごめん。水垂れたわ」

「ッ、ぅあ、…っ…!」




俺は突然首を舐められ、自然と翔にもたれるように身体が跳ねる


びっくりして、ジョッキを落としそうになってしまった




「っばか、やめろって…」

「なんか、エロい顔なってるやん」

「お前に言われたくねーから」

「そう?ええから、食べてて」

「ふ、ぁ…っ」




翔は調子に乗って首に舌を這わす。
逃げようとしたのに腰をしっかりホールドされてしまい、おしおきとばかりに吸い上げられた


だから首はだめだって…!




「翔っ、首、むり…っ」

「んー?こっちやったらえぇのん?」

「っひ、ちょ…!」

「あー、もー、ほんまあかん。ムラムラする」




服の裾から手を入れて、俺の乳首をこねる

暴れかけた俺に気付いたのか、警戒してなかった首に噛み付いた




「い゛っ……!!」

「声出したらバレるから、しー、な?」

「…ん………は、ぁ…」




もう固くなった乳首を擦られると、酒で鈍くなった頭でも変な気分になってしまう。
手から逃げても後ろの翔の身体にぶつかってしまった


振り向かなくても、ニヤニヤしてんだろーな、ってわかるからムカつく



耳元で楽しそうに笑われ、その吐息にも身体が強ばった




「い、いい加減にしろっ…変態…!」

「もうちょっとだけ」

「ちょっとって、あっ、ぅ…」




力の入らない手で抵抗してみても、全くの逆効果で



なんでこいつこんなエロいの!?
女の子食い放題で育ってきたんだ、絶対




「何してんです、かっ」

「…―ぎゃぁ!!」




龍士の声が聞こえ、翔の体温が悲鳴と共に一瞬で消えた

背中が涼しくて軽い


振り返ると、うずくまる翔と、それを蹴り飛ばしたらしく、片足を上げたまま翔を見下ろす龍士。
大爆笑のセンター分け




「いったぁー…!何すんねんこのクソガキ!!」

「俺が聞いてるんです」




起き上がった翔は脇腹を押さえ、やや涙目で龍士を睨み付ける


涙目って、加減しなかったのかこいつ




「大人の時間や。ガキは引っ込んどけ」

「強姦は犯罪ですよ」

「同意の上や」

「そうは見えませんけど」




さすが俺の保護者、龍士


俺の服を直して、大丈夫ですか、と心配そうに覗き込んだ




「りゅうじー、マジで俺の守護神!」




あまりの嬉しさに、龍士の首に腕をまわして抱きつく

突然のことによろめきながらも、背中に腕をまわして支えてくれた




「もうちょっと、危機感持ってください」

「だって、」

「はい、でしょ?」

「はい」




龍士様降臨ですよ


俺の返事に満足すると、頭を撫でて珍しく笑う。
年上のお姉さんに気に入られそうな、生意気な顔




「笹川くん、絶対俺の方がえぇって」

「お前、エロいもん」

「そいつもヤることしか考えてへんやん」

「アンタと一緒にしないでください」




龍士は俺を放して、俺の隣に座り込んだ

ずっと傍観を決め込んでいたセンター分けも、何を思ったか龍士とは反対側の俺の隣に座る




「龍ちゃんねー、さっきから機嫌悪くって」

「爽汰(そうた)」

「ヤキモチだもんねぇ」

「また蹴られたいんですか」

「龍ちゃんのツンデレー」




爽汰って言うのかこいつ。
龍士といつの間にか仲良くなってる

長身でひょろこい身体に黒髪は、龍士とは正反対。
太陽と月みたい



龍士はため息をつくとタバコに火をつけて、長く煙を吐き出した。
こいつタバコ吸うんだ。
マスターは吸わないから、なんか変な感じ。
様になってるけど



俺も吸おうかなー、とか思ってたら龍士と目が合う。
そのまま、おもむろにそのタバコを俺にくわえさせた

吸いなれた、いつもの味




「俺と一緒なんだ」

「そうなんですか?」

「ありがとー」

「もー、俺の前でイチャつくん禁止!」




翔が爆発した


龍士はそれを一瞥しただけで、特に何も反応せず新しいタバコに火をつける




「じゃあさぁ、2人で勝負しようよ」

「勝負?」




爽汰はビールをあおりながら、楽しそうに呟いた。
あくまで傍観者として楽しむつもりらしい


俺の方にもたれて、半分ぐらいになったジョッキを持ち上げる




「勝った方が、アッキー独り占め。負けたら口出しなしってことでー」

「乗った!」

「年齢以外なら負けませんけど」

「クッソ生意気やなぁ、自分。負けたらちゃんと約束守れや」

「そっくりそのまま返します」




アッキーって俺?
なんで名前知ってんの


てゆーか、そのルール何!?
俺にメリットもねぇし、翔が勝ったらどうすんだよ。
公開レイプでもされかねねーんだけど



俺の意見はもちろん聞かれることもなく、俺から離れた爽汰は2つのジョッキに溢れるほどビールをついだ。
泡は溢れて、ほとんどが金色の液体で埋まる




「ビールの早飲みでいきましょう。最近ここでブームきてんだよねぇ」




2人にそれぞれを手渡すと、上から手で押さえてスタンバイ


もう始まんの?

俺の地獄へのカウントダウン




「じゃあ、いっきまーす」




一瞬空気が張り詰めて、爽汰の手が上がるのがえらくゆっくり見えた


ほぼ同時にジョッキに口をつける



結局誰も、俺には何も聞いてくれなかったな…



[*前へ][次へ#]

20/28ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!