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好きなんだけど!
熱烈すぎても迷惑




「笹川さんとこうしてるって、夢みたい」




夢であってほしい


また遠慮なく入ってきた舌も、俺の腹を撫でる手も、みんな今すぐ消えてくれればいいのに




「笹川さん、泣いてる?」

「なっ、泣いてない!」

「もうムリ。その顔スゲーそそられる。優しくできないわ」

「待て待て待て待て!!アキ!こらっ…!」




まるで盛りのついた犬みたいに、俺のTシャツをたくし上げ胸の飾りに吸い付いた

無意識に身体が跳ねて、アキの服を握り締める



ウソだろ、こんな所でありえねー!
いや、場所の問題でもねぇんだけど!




「んっ、ぁ、アキ…!それ以上やったら、大声出す!」

「そういうのは、宣言する前に実行しないと」

「ん、ぐッ…!」




おしぼりを口に突っ込まれ、そのまま左手で押さえつけられた。
俺ってやっぱりバカだったんだ。
こいつに交渉なんてできるわけないって、今さら気付く



ほんとこいつ脳みそ腐ってんじゃねーの!
大体俺が抱かれる側!?どう見たってアキの方がかわいい顔してんじゃん!
オッサンがアンアン言ってても誰も喜ばねーよ!
アブノーマルもいいとこだわ!




「ん゛ーッ!!」

「何?早く触ってほしい?」

「ん、んッ!」




ズボンの上から性器を撫でられ、そろそろ本気でまずいと身体中が警鐘を鳴らしていた

殴りたいんだけど、やっと成人したばかりの少年を殴るのは、やっぱり気が引ける



俺のチキン!



ニヤニヤと勝ち誇った笑みが近付き、俺の頬をいやらしく舐めた




「かわいい。笹川さん大好き、もうたまんない」




大好き、だと?
こんな嫌がるようなことしといて、大好き?
これが愛情表現!?


俺はてっきり、もしかしたらまたなんかやらかしたのかもとか思って遠慮してたのに…!




「ッ、ん、ぅ…!」

「うわっ、ちょ、笹川さんっ!?」




目の前にあった首を両手で力一杯絞めると、アキは慌ててその手を外そうと自分の手を持って行く

解放された口のおしぼりを取ると、アキの腕を握った



「あんまオッサン舐めんじゃねーぞ」




形勢逆転。
と言っても組み敷かれていることに変わりはないから、俺のが普通に不利な状況なんだけど

それでも、驚くアキの顔がたまんない



どうしてくれようかと思ったら、アキの表情がみるみる嬉しそうな顔になる


うわー、悪い顔




「いいね。抵抗できないぐらい、ぐちゃぐちゃにしてあげる」

「すいませーん!!」




アキの言葉も聞き終わらないうちに、大声で店員を呼んだ。
こんな店で大声で呼ぶなんて、普通はありえねーんだけど

遠くから聞こえた返事に、アキはしっかり舌打ちして俺の上から降りる




「笹川さんのケチ」




これはケチとは言わないだろ


目の前で拗ねているアキは、さっきとはまるで別人みたいだ



入ってきたお姉さんに会計だと告げると、アキは不満そうににじり寄ってくる




「もう帰るの?つまんないじゃん、どっか行こ?」

「お前、よく言えんね」

「だってまだ何もしてねーもん」

「俺はもう十分だから」




これ以上何をするって言うんだ。
考えるだけでおぞましい


サイフから壱万円札を抜いてテーブルに置くと、俺はさっさと部屋を出た。
アキを待たずにトイレに行くと、首筋には2つ目の紅い痕


あーあ、これ隠せんのかな。
また有村に怒られそう。
いや、ひとつはあいつにつけられたんだけど


冷たい水で顔を洗うと少しだけスッキリして、誰か来る前にトイレを出た




「笹川さん」

「げ」




店を出るとアキが立っていた

俺の嫌な顔も気にせず、何が楽しいのか隣をニコニコと一緒に歩き出す




「帰れよ」

「タクシー拾うから、待って」




9歳も下で、しかもファンだと言うこいつを俺は邪険にできない。
こうやって見れば普通の爽やかボーイで、あんなことをする奴には見えないのに


普通に友達になりたかった

仲良く飲んで喋って、フラフラになって帰るみたいな。
俺友達少ないから、そーゆうの憧れるんだけど




「笹川さん、そこ左」




言われるまま左の路地に入って、残念なイケメンを見る




「なに?」

「いや、お前が普通の友達ならよかったのに、と思って」

「俺もそう思うよ」




あの人懐っこい笑みを浮かべて、ぎゅう、と抱きしめられた

絶対思ってねーだろ。
普通の友達って、こんなことしねぇから



スルリとケツを撫でられて、文句を言おうと開いた口にアキの舌が滑り込む

俺の舌をなぞって、小さな音を立ててあっという間に離れた




「何、やって…!」

「嫌われたくないから、もうしない。俺ホントに笹川さんのこと好きだから、絶対諦めない」




至近距離での告白に、アキは顔を真っ赤にして離れる




「帰したくなくなるから、これ以上送れない。そこまっすぐ行ったら乗り場だから」




おやすみ、とアキは踵を返して早足に行ってしまった


照れるアキはかわいい。
不覚にもキュンとしそうになったじゃねーか。
いやいや、ほだされんなよ自分




なんだかんだでごまかされそうな考えを振り払って、言われたままタクシー乗り場へ向かう

なんとなく、撫でられたケツのポケットに違和感を感じてそこを確かめた



わお、諭吉さんが2人。

さっき俺が払った分は返されてしまったらしい。
もう1人はなんだ、タクシー代?


セレブですね、わかります




今度会ったら返そう


タクシーに乗り込んで、諭吉はサイフの隠しポケットへ突っ込んどいた




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