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好きなんだけど!
リアル変態



「お疲れさま」

「お疲れ。ごめん、待ってたよな」

「いいの、俺が誘ったんだから」




外に出るともうアキが立っていて、目が合うとすぐに駆け寄ってくる。
嬉しそうに笑って俺の隣に立つから、マジで犬みたい。
さりげなくお尻を覗いたけど、やっぱり尻尾はついてなかった




「久瀬さん、居酒屋とか行く?」

「俺がショットバーでチビチビ酒飲んでると思う?」

「似合うと思うけど」

「ありえねーわ」




自分で想像したけど、やっぱり柄じゃない

それに比べ、年下であろうアキは童顔なくせになかなか様になっていた。
なんだろう、心の余裕とかかな

自分で言って悲しくなってきた



「久瀬さんて俺より年上だよね。今何歳?」

「今年29」

「もっと若いと思ってた。何月生まれなの?」

「10月4日。聞いたからにはなんかくれんの?」

「なんでもあげるよ。その代わり、俺の誕生日もよろしく」

「いつ?」

「3月29日。この前ハタチデビューしたの」

「ハタチ!?若っ…羨ましいわ」

「久瀬さんだって十分若いじゃん。あ、ほらここ」




足を止めたアキの指差す方を見ると、落ち着いた雰囲気の居酒屋。
俺がよく行くチェーン店とは違って、黒を基調とした高級小料理屋みたいな佇まい


俺がこんなとこ入っていいんだろうか




「予約してるから、行こ」




呆ける俺の手を掴んで、アキはためらいなく入ってしまう。
場違いセンサーなるものがあれば、俺は勢いよくはじき出されてる自信があった



受け付けで名前を告げると、奥の座敷へ通される。
座敷は全て個室になっているらしい

そういえば昔はよくこうゆう店に連れてってもらったな




「久瀬さん、ご飯食べた?」

「まかない食べてるから、腹は減ってない」

「じゃあ、俺ガッツリ食うよ」




ガッツリ宣言の通り、日付もまわったこの時間にアキは豚カツを頼んだ。
これぞハタチのなせるわざ


オッサンは、この時間に揚げ物なんか食ったら、胸焼けで気持ち悪くて寝れないからね



先に運ばれてきた生ビールで乾杯をする。
やっぱ夏はこれでしょ

ぐっすり眠ったおかげか、今日はいつもより調子が良かった


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「俺、すげームキムキのタンクトップのオッサンにナンパされたことあるよ」

「マジで、何それどうしたの」

「丁重にお断りした。普通にいい人だったわ」




楽しそうに笑うアキにつられて、俺もガマンできずに笑う。
アキはずっとゲイだから、この手の話は豊富だ。
派手だし、よくナンパされるらしい

俺には未知の世界だから、何を聞いても新鮮で面白い。
実際は映画よりも生臭くて、人間臭い話



酒の力も手伝って、昔からの友達みたいに話が弾んだ




「久瀬さん、酔ってる?」

「ちょっと酔ってるかも」




タバコに火をつけると、アキがするりと横に座る

何かと思って顔を向けると、ニコニコと愛想のいい笑顔でタバコを取り上げられた



えっと、何この空気?


取り返そうと手を伸ばすと、それも簡単に捕まれアキの方へ引っ張られる。
思わず倒れ込んでしまった




「っ、何だよいきなり」

「ねぇ、本気でバレてないと思ってんの?笹川さん」




バレるって何?




あれ、こいつ今、笹川さんって…




酒がまわってうまく働かない頭は、チリリと妙な危機感に襲われる。
慌ててアキを見上げると、俺のタバコを吸い込んで、煙を楽しそうに俺に吹きかけた

反射的に目をしかめると、唇に生暖かい感触。
先日イヤというほど味わったキスの味



このガキ…!




アキはすんなり唇を離して、タバコを灰皿に押し付けると目を細めて笑う

イヤな予感しかしなかったから、咄嗟にアキの胸を押して離れようとするも、その腕さえ捕まれてしまった




「な、んだよ…ッ!」

「笹川さんってバカだよね」

「はぁ!?っ、ん―…!」




いきなり首に顔を埋められ、身体中に鳥肌が立つ。
だから首はナシだって!


俺の訴えも虚しく、首筋をつつ、と温かいものが這った




「ちょ…!ぁ、きっ…やめろってば!」

「ダメ。ここにホクロあるの、知ってる?」

「知るかよっ」

「これと、誕生日、バカ正直に答えてくれたから笹川昭文だって確信した」




ホクロの位置も誕生日も歳も、全部知ってたってことだよな。
マジでこいつ俺のファンなの!?
コアなファンはストーカー並に危ないっつーからね。
信用した俺がバカだった

なんか、俺のファンがまだいたってことには感動してんだけど




「この世の中から忘れ去られてると思ってたわ」

「俺をこっちの世界に引きずり込んだのは笹川さんなんだから、責任とってよね」




責任って何。
まだ小学生であったであろうアキが、ゲイになったのは俺のせいってこと?




「ジャイアンかお前は」

「笹川さんが手に入るならなんでもいい」

「ゃ、めっ…!」




また首を舐められ、今度はチクリと吸い上げられる。
一度味わった感覚に嫌な汗が流れた




「ここにキスマークあるんだけど…男?女?」

「ほっとけ!」

「こんな悪い口、塞いじゃおっか?」




下から舐めるようにキスをされ、歯列を割って舌が滑り込む。
押し出そうとした舌さえも絡め取られ、軽く吸われて身体が強張った



マジありえねーから!
俺女の子ともこんな濃厚なのしたことねぇわ!


せめてもの抵抗と、捕まれて腕でアキを押すも、ぞわぞわとした感覚に力が入らない

いっそのこと、この舌を噛んでやろうか。
それだと血出るよな、さすがに俺も気が引ける




「ふ、は……っ…犬かテメーは」

「発情期かもね」

「っ、去勢しろ」

「笹川さんがやって。燃える」




ド変態じゃねーか


俺のツッコミが言葉になる前に、さっきまで座ってたはずの座布団に押し倒された

逆光で見えにくいが、アキは嬉しそうに俺の腰の上に跨がる。
しまった、リアルにこれは動けない




絶体絶命の大ピンチってやつ?



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