[通常モード] [URL送信]

好きなんだけど!
11月11日



「笹川さーん」

「んー?」

「何食うてんの?俺にもちょーだい」




控え室で台本を読む笹川に、今入ってきたばかりの中野が、隣に座った


笹川は台本を置いて、手元にあった箱を差し出す




「プリッツ?」

「うん。なんかさっき、有村にもらった」

「悠馬が…?」




中野は少し考えてから、それを1本くわえた




「笹川さん、甘いもんあかんかったっけ?」

「うん、全然ダメ」

「なぁ、今日なんの日か知ってる?」

「11月11日…?」




カップのコーヒーを飲みながら、笹川は疑問符を浮かべる


しばらく考えたものの結局分からなかったらしく、首を捻って中野の顔を見た




「何の日…?」

「お菓子にかこつけて、キスできる日」

「えっ、なにそれこえーんだけど」




あながち間違いでもない説明に、笹川は顔をしかめる




「俺、初耳だわ。どうすんのそれ」




興味津々といった様子で、笹川は身を乗り出した

中野も知らない笹川が珍しいらしく、プリッツを1本抜くと、おもむろにくわえさせる




「いきなり、何」

「こーやって…反対を、こう…」




説明しながら反対側を自分もくわえ、キョトンと見る笹川と視線を合わせた


もちろんキスをするつもりなど毛頭なく、説明が終われば折ってしまうつもりだった




「このまま、両方から食べていって…」

「んー、なるほど」




カリ、と先をかじり、納得した風に頷く



中野がそろそろ折ろうかと思った時、さっき入ってきたドアが開いた。
まさにラブコメ的タイミングで

もちろん入ってきたのは有村悠馬




「は…?」

「あ、りむら…」

「…―悠馬!?ちゃう!誤解や!」




慌てる中野に、ぽかんと折れたプリッツをくわえる笹川

いつの間にか、笹川は中野の服を握っていた。
それを見て、有村の眉間のシワが更に深くなる




「笹川さん、何してんの」

「中野が、今日はこうやってキスする日だよー、って」

「へぇ…文哉さん、俺にも教えてくださいよ」

「悠馬くん、1回落ち着こか!」

「落ち着いてますけど。自分でもびっくりするぐらい」

「目が怖いからぁ!」




逃げようと立ち上がった中野の腕を掴み、有村はにこりと笑った

それでも、中野は冷や汗を流している



有村はプリッツを1本取ると、笑顔のまま中野の口へ押し込んだ




「で、どうするんでしたっけ?」

「イヤ!悠馬くん!話聞いて!」

「言い訳は聞きません」




中野が壁に押し付けられるのとほぼ同時に、有村の背後から何かぶつかる音が聞こえる


2人が振り返ると、そこには顔を真っ赤に染めた笹川がイスにつまづいてよろけていた



2人と目が合うと、慌てて立ち上がり首を横に振る




「ちがっ……あの、俺……2人がそーゆう関係だって、知らねーから…」

「笹川さん、何言うてんの」

「じゃねーよな…っ、ごめん、タバコ吸ってくる…!」




走って部屋を飛び出した笹川に、2人はドアが閉まるまで動けなかった

先に動いた有村は、ジロリと怨めしそうに中野を睨む




「…文哉さんのせいですよ」




有村は、ため息をつきながら手を放した




「なんでやねん!お前がアホなことしてるから勘違いされたやろー!」

「文哉さんが笹川さんにちょっかい出すからです」

「出すわけないやろ。なんで俺が、あんなヒョロ男に…!」

「ヒョロ男ってなんですか。あの無防備な身体がいいんですよ」

「ほんまお前ムッツリやな。どうせプリッツかて、ちゅーしたろー思て渡したんやろ」

「当たり前じゃないですか」




いけしゃあしゃあと言ってのけて、有村は腕時計で時間を確認する。
次の撮影までは、まだ余裕があった




「なんや、ポッキーゲームしてくんのか?」

「必要ないです」




せっかく用意までしたくせに、意味がわからないと首をかしげる中野に、有村は楽しそうに口角を上げる




「適当に理由つけて、できますから」

「もー、イヤ!悠馬の変態!」

「男はみんな変態ですよ」




脱いでいたスーツのジャケットを羽織り、ボタンをとめた




「さっき、文哉さんがした分も消毒してきます」

「お前…人をバイ菌みたいに…!」




たしかに数十分前にした撮影では、弘人と祥平のキスシーンがあった

有村は、まさか今から男にキスしに行くなど思えないほど、爽やかに部屋から出ていく



独占欲の強い有村が撮影とはいえ、キスを許しているのは中野を信用しているからなのだが、1人拗ねる中野文哉にはまだ伝わっていないらしい




------------------------




「…ん、ぁ……は…」

「ここにもついてる…」

「ッ、ん……も…や…っ」

「…んな気持ち良さそうな顔で言われても、説得力ねぇから」

「だっ、て…」




現場のビルの陰、隠れてタバコを吸っていた笹川が見つかってどうなったかは、2人の秘密



有言実行の男 有村悠馬




END


------------------------




まさかの中野とのポッキーゲーム^p^

くだらねぇ\(^0^)/



そしてムダに長いという悪夢。
できれば大目に見た後優しく抱き締めてください←

お粗末様でした!



[*前へ][次へ#]

3/17ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!