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好きなんだけど!
キスマーク



明日は撮影はないから、ほんとはさっそく、Aliceに行くつもりなんだけど

有村は特に気にした様子もなく(いやそれも失礼な話なんだけど)、冷蔵庫から出した水を飲んで、俺の前のテーブルにも置いた




「なら泊まってけば。俺明日雑誌の撮影だから、昼前に送る」

「いいよ、タクシーで帰るから。そこまで迷惑かけらんねー」

「今さらすぎるわ」




ふあ、とあくびをして、有村は俺を見る。
有無は言わせないらしい。
それならば、お言葉に甘えてみようか


ふと有村の視線がずれ、怪訝そうな顔でまた俺を見た




「それ何、そんなのあったっけ?」




それって何?

俺が理解できないでいると、有村は自分の首を人差し指で叩く


首?
ケガでもしてたっけ…?



下を向くも見えるはずもなく、鏡でも借りようかと身体を起こすと、すぐそばまで来ていた有村が俺の髪をかきあげた。
首を撫でられぞわぞわとしたものが背中を這う




「な、何…?」

「……キスマーク?」


ああ、それお前だから。
そんな不思議そうな顔されても困るわ。
それより、首は触んないで




「誰がやったの?アンタ、女いたんだ?」

「さっき、お前が寝ぼけてやったんだろーが」

「はあ!?俺?」




全然全くもって信用してない顔。
そりゃあね、知りたくもない事実だろーけど、自分で聞いたんじゃねぇか




「誰かと勘違いしてた。お前、女いたんだ?」




さっきのセリフを、嫌味ったらしく返してやる。
有村は少し動揺してる様子




「いやいや、ありえねーだろ。そんな女いねぇし」

「じゃあ、片想い?」

「は?」

「愛してる、って言ってたけど」




俺と目があったまま、有村は固まってしまった。
あらま、なんかデッドゾーンな感じ?若いっていいね

愛してる、なんて言ってみたいもんだ




「ごめん、聞かなかったことにするわ」

「…いいよ別に」

「なんで?」

「うるせぇ。映画の撮影の、夢…見てただけだから」

「は?映画?マジメだね、お前は」




夢の中まで仕事してるとは、少し見習った方がいいかもしれない


って言うかもしかしなくても、俺は撮影の時に、もう1回あれをされんのか?
できれば首は勘弁願いたい




「有村悠馬のスキャンダルかと思ったんだけど」

「仕事一筋だし、ありえねー。それより、撮影あんのにこんなもんつけてんじゃねぇよ」

「すげーぶん殴りてぇわ」




俺の首を親指で撫でながら笑う有村は、心なしか少し嬉しそうな気がする。
ちょっと寝たから機嫌いいのか?
赤ちゃんみたい




「それより腹へった。なんか作って」

「え、お前こんな時間に飯食うの?」

「オッサンと一緒にしないで。今日っつか昨日?なんも食ってねーし」

「若さってすげーね」




俺なんか酒飲んだだけで胃もたれしてるよ。
時間的にも今は4時ちょっと過ぎ。
今食べたら明日気分悪くなるよ絶対



ってか、俺が作んの?
俺なんか男の独り暮らし料理だからね普通に

有村なんかこの前某番組で、女の子が喜ぶオシャレディナー、とかって作ってんの見たことあるけど。
うまそう、とか思いながら、カップラーメンを食べていた日を思い出したら悲しくなってきた




「俺、チャーハンとかしかできねーもん」

「いいよそれで」




どうしても今何か食べたいらしい。
困った坊っちゃんだ


いや、でもこれは手料理に飢えてるのかもしれない。
男は胃袋を掴め、って言うもんな。
これでなついてくれたら、いつぶん殴られるかヒヤヒヤしながら会話しないで済むかも




「わかった。まずくても責任とって完食しろよ」

「人間の食い物ならな」




どこまでも減らず口を!

今に見てろ、と意気込む俺など露知らず、有村はまたひとつあくびをしながらテレビをつけた




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