三日月の誘惑
二十五話
戦いの終わりを告げる―――――――。
二十五話
‐終戦‐
突如現れた面をつけた者に、全員がそちらへと目を奪われる。
「(白君…)」
リュウは目を細め、目の前にいる者と先程会った少年を重ね合わせた。
カカシが【瞬身の術】で倒れた再不斬の傍に現れ、その首に指を当てて脈を確認する。
「(……確かに死んでるな…)」
相手の脈がないことで本当に死んだのだと判断した。リュウはその一部始終を黙って見送る。
「ありがとうございました。僕はずっと……確実に再不斬を殺す機会を窺っていた者です」
少年がペコッと頭を下げる。
「確かその面……お前は霧隠れの追い忍だな………」
「……さすが…よく知ってらっしゃる」
「追い忍?」
ナルトがカカシの元へと駆け寄る。少年は面を外さないまま、些かくぐもった声で、言った。
「そう。僕は“抜け忍狩り”を任務とする、霧隠れの追い忍部隊の者です」
少年がいる木の真下にナルトは立ち止まり、相手を凝視する。
かと思うと死んだ再不斬を見、そして再び少年を見上げた。
その行動をもう一度繰り返した後、もう一度少年をキッと睨み上げる。
「何なんだってばよ!!!お前は!!?」
相手を指差し、突然叫ぶナルト。
「安心しろ、ナルト。敵じゃないよ」
カカシがスッと立ち上がり、ナルトを宥めるような口調で言った。
「ンなこと聞いてんじゃねーの!オレってば!!あの再不斬が…あの再不斬が殺されたんだぞ!!あんなに強ぇー奴が、
…オレと変わんねェあんなガキに簡単に殺されちまったんだぞ!オレ達バカみてーじゃん!納得できるかァ!!」
―――ナルトの言いたいことはそれだったらしい。
今まで自分達が苦戦を強いられていた相手が突然現れた同じ年頃の少年に殺されてしまった。
ナルトが怒るのも仕方のない話だ。
「(……でもあの千本の位置、角度からしておそらく…)」
リュウは再不斬の首に刺さったままでいる千本を眉間に皺を寄せながら見つめた。
「ま!信じられない気持ちも分かるが、これもまた事実だ」
ナルトの傍へと歩み寄ったカカシが、その金髪の頭の上にポフッと手を置く。
「この世界にゃお前より年下で、俺より強いガキもいる」
その言葉にナルトはようやく大人しくなる。未だその顔は納得いかないような表情を浮かべていたが…。
サスケも僅かながらその言葉を聞いて、何かを考え込む。
そんなサスケの顔を横目で見て、再び視線を少年のほうへと移したリュウ。少年のほうも面越しで相手を見る。
リュウの唇が声には出さず、何かを言った。
「―――――――…」
「!」
その唇の動きを読唇術で理解した少年が面の中で目を見開いた。
そんな相手にふっと一瞬微笑むとそのままリュウは踵を返し、ナルトとカカシのいるほうへと足を向ける。
「(…ありがとうございます…)」
少年は心の中で感謝を述べる。
見 逃 し て や る よ 。 あ の 時 の 礼 だ …
相手はそう自分に言ったのだ。
そして【瞬身の術】で再不斬の元へとスッと現れる。
「…あなた方の戦いもひとまずここで終わりでしょう。僕はこの死体を処理しなければなりません。何かと秘密の多い死体なもので…」
再不斬の身体を担ぎ上げ、言う。
「…それじゃ、失礼します」
印を組み、その場からフッと姿を消した。
―――まるで少年が持ち去ったかのように、辺りに渦巻いていた濃霧も少しずつ晴れていく。
「フ―――――」
カカシは少年の気配がなくなったことを確認した後、安堵の溜息をつきながら上げていた額あてを普段の位置に戻し、その左眼を隠した。
「さ!俺達もタズナさんを家まで連れていかなきゃならない。元気よく行くぞ!」
「ハハハッ!!皆超すまんかったのォ!ま、ワシの家でゆっくりしていけ!」
一難去ったことに安心したタズナが豪快に笑う。
その言葉に全員が歩き出そうとした時、目の前にいたカカシの身体がグラリと傾く。
ドサ…
そして、その場に倒れ込んだ。
「何…?!え…!?どうしたの!!?」
「カ、カカシ先生―――!!」
突然の出来事にただ驚くことしか出来ないサクラとナルト。
「(か…身体が動か…ない…。…写輪眼を使い過ぎたな…L)」
「(…身体に合わない写輪眼を長時間使いすぎるからそうなんだよ)」
カカシがだるそうな顔をしているのを見下ろしながら呆れ返るリュウ。
―――本来、写輪眼はうちは一族の一部の家系だけに現れる特殊な眼。
それを“ある事件”のせいで予想外にも手に入れることになったカカシには、その眼との相性が合わず、長時間使うとその身体に負担が出てしまうのだ。
「(…世話が焼けるなぁ)」
そう思いながらもふっと頬を緩める。そんな無謀で後先考えない行動はけっこう好きだった。
自分を省みずその身体を張って下忍達やタズナのことを守ってくれたカカシ。
その行動は忍の鏡とも言えよう。
リュウは背中に携えていた刀に手を掛ける。スラッと鞘から引き抜けば、妖しくその刃先が光った。
「リュウ、お前何してんだってばよ?」
「ん?まぁ見てなよ」
ナルトがカカシから自分へと顔を向けたのでにっと笑う。
右手で柄を持ち、左手の人差し指を刀身に当てる。
プツッという音がしたかと思うと、その刀身から柄のほうへ向かって深紅な血が伝った。
「森羅万象・全ての力あり。汝の主の呼び掛けに…人型として応え吹き荒れろ、【蓮】」
ナルトに鳥としての姿を見せてしまっていたことを思い出し、人型となって出てくるよう呼び掛けた。
すると。
ゴウッとリュウの目の前に突風が湧き起こり、つむじ風が出来る。その中から赤い髪の毛が見えてきた。
左頬には何かの紋様があり、閉じられていたその目がゆっくり開いて金の瞳が覘く。
「蓮!あのさ、頼みがあるんだけどー…」
相手へと両手を合わせ、小首を傾げる。他の者からして見れば思わずときめいてしまう仕草だ。
が。
『お前どーしてくれんだよ―――――っ!!』
「は?…て、ちょっ…?!」
いきなり両肩を掴まれたかと思うと、勢いよく揺さぶられる。
『お前がこの前“すぐ落ちる”とか言いやがったから信用したのにっ…!全然落ちねぇじゃねーかぁ!!』
そう叫んで服のある部分を指差す蓮。…赤く濁った小さなシミがあった。
「………L」
前回の“ナルト巻物盗難疑惑事件”を思い出す。
―――何事かと思えば、そんなこと。
しかも見ればほんのちょっとしか付いてない。言われなければ分からないほどの…、だ。
「…着替え(生え替わり)すればいいじゃん」
『時期を考えろっ!L―――…って、ん?お前何でそんな格好してんだ?』
「(今気づいたのかよ…L)」
蓮が自分を上から下まで凝視したかと思うと、可笑しそうに頭を掻き回して笑う。
『ぶっ…あっーはは!よく似合ってるぜ、その姿!!まさかお前が男装っ……い゛っ?!』
「(こンのバカ、ベラベラ喋んなっ!今の状況見て分からねーのか!!L)」
蓮の足をダンッと踏みつけ、小声でそう言った。
「ねぇ…リュウ君…。その格好いい男の人………誰?L」
サクラがまるで漫才でもしているかのような目の前の二人組を見て、恐る恐る尋ねる。
そんなサクラを見てばっとその手を握る蓮。
『お、可愛い子じゃん!俺、蓮って言うんだ。一緒に空のドライブでもしねぇ?』
「え…、ええっ?!ちょっ……//////」
「「………(ブチッ」」
それにリュウとナルトがキレた。
ドカッ
自分より背の高い相手の背中を蹴る。
「…いーい根性だなぁ、蓮。主の頼みも聞かずに何が“空のドライブ”だ、あ゛っ?!
―――…黎に密告するぞ(ボソッ」
『狽チわ、悪い!!で、何をして欲しいんだっ?L』
一変して態度が豹変する。ナルトがその間にサクラをその手から引き離す。
「こっちの人を背負って歩く!場所はそっちのおっさんの家だ」
そう言ってカカシとタズナを指差す。すると蓮が渋い顔をした。
『うげぇー、野郎を背負って歩くのかよ。どうせ密着するならそこの女の子や変化前のお前…「何か言ったかっ?!」
思わぬことを滑らして話そうとする相手をリュウは睨み上げる。
「「「「「(……何なんだ……L)」」」」」
その光景を見ながら、リュウと蓮以外の全員の考えが一致した。
長きに亘る鬼人との戦いはようやく終了した。
―――――…数日間程は………。
***“あとがき”という名の言い訳***
後半ギャグ…でしたかね?(汗)
蓮が再登場です!人型としてですけど…。そして蓮は女好きです(買}ジっ?!
必ずナンパをします。それが人であれ鳥であれ………。
リュウ君のキャラが多少ナンパ男っぽいのはここからの影響かも?
ほら、“子は親に似る”って言いますから☆(あれ?何か違う…;
次は黎も出てくるかなぁ?黎はまだ少しも出してませんしねー。
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