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三日月の誘惑
二十四話



雪のように白く、雪のように汚れのない、少年―――――――。







二十四話
‐始めの出会い‐








赤い満月が暗闇を不気味に照らすとある屋敷の室内。


ピチャッ……ピチャッ……


刃先から粒となって滴り落ちる赤い雫。それは次々に落ちていき、小さな池をつくりあげていった。


辺り一面に広がる赤一色の世界。


その正体は―――――…




無数の死体と…噎せ返るようなおびただしい血だった。




そんな中に刀を握ったまま、腕をだらりと垂らした女が一人―――…いた。



面をつけたまま血黙りの池に浸る死体を蹴り飛ばす。まるで感情がない人形のように、その行動は機械的だった。


ブンッ!!

その瞬間、風を切って凄い勢いで近づいてくる何か。


だがそれに焦りもせず、女は垂直に高く飛躍する。宙でその身を翻しながら自分に向かってきた物を見た。


それは―――…、大刀。



「―――女。よくも人の獲物を殺ってくれたな」

大刀は再び闇の中に消えていく。その先で聞こえる、声。


暗闇を見据え、相手を確認すれば、口を包帯で巻いた男と。


その背後に、少年もいた。



「―――木の葉の暗部、か。まあ誰だっていい…にしてもすげぇ殺し様だなぁ。切り刻まれてる奴やら五体不満足な奴やら…」

相手の笑いを含んだその言葉に僅かに視線を逸らす。


「………近寄るな。ようやく落ち着いたんだ…無駄な殺生はしたくない」

「あ?何言ってんだ、てめぇ。―――俺は人殺せなくてウズウズしてんだ。その憂さ晴らしにてめぇを殺ってやるよ」


そう言って強い殺気を自分へと向ける。


「…っ殺気立つな。今歯止めが出来る状態じゃない。お前だけじゃなく、後ろにいるその少年も殺すことになる!」


自分の胸元にあるペンダントを強く握る女。そんな女を見て、少年が初めて口を開く。



「―――ここは引きましょう、再不斬さん」

「…あ?何言ってやがる、白。腕試しが出来る手頃な相手だ…逃がすわけにはいかねぇ」

「僕達にはまだ次の任務がありますよ。…それにこの人、かなり疲労してるみたいです。

そんな人と戦って勝っても再不斬さん―――嬉しくないでしょう?」


「…フッ、相変わらず口が上手ぇな。―――今回は見逃してやるよ。感謝するんだな」

「………」

女は少年のほうを疑うような目で見た。


何を企んでる―――――…?


そう心の中で呟いたのだが、相手はそれを知ってか知らずか




自分に向かって―――――微笑んだ。




「?!(この子まさか…)」




庇ってくれた………?




ただの思い違いかもしれなかったが…。



少年が醸し出す雰囲気はとてもきれいで、静かで。



一気に心の中が清められるようだった。



「おい、女。…次は必ず殺してやるから覚悟しとけ」

「來夜…」

「あ?」

「女なんて名前じゃない、來夜だ」

ガシャン

そう言った瞬間、近くの窓を割り手すりへと手を掛ける。

そして飛び降りたと同時に面を外し、室内にいる二人を見て言った。


「またどこかで機会があれば会おう―――――…鬼人再不斬と、白君」



「フン…最後まで気取った女だな……」


最後にそう再不斬は声を漏らした。













「………」

彼らと出会った時のことを思い出す。


木々の枝から枝へときれいに飛躍し、ある場所でその動きを止めたリュウ。


そこには再不斬とカカシの戦いを見ている子どもがいた。


「―――やっぱり白君か」

その言葉にはっと意識をリュウへと向ける。


「っあなた…、もしや來夜さんですか?」

男とも女とも取れる中性的な声でそう尋ねてきた。

リュウは無言で印を組み、変化の術を解く。


爽やかな風と小爆発音がその場に吹くと、そこには一人の女の姿。


変化を解いた、シュウが立っていた。


肌蹴た橙色の着物が新緑の色と相反してその色を際立たせ、エメラルドグリーンの瞳が再度相手を見つめる。

白はにこりと微笑む。


「よくお似合いですね、その着物。來夜さんとはあの暗部の任務での一回でしか会いませんでしたからその姿とても新鮮です」

「ありがとう。でも世間話をしに来たわけじゃないの。―――…ここで何してる?」

「………」

そう質問すれば、相手は黙り込んだ。それに溜息をつくシュウ。

「…とはいっても、今の状況からすれば………カカシの戦法の分析と…再不斬の援護、かな?」

それでも無言を貫き通す相手に、今度は質問を変えて尋ねる。


「ガトーと手を組んでるの?」

「―――はい…」

些か沈黙を守っていたが、諦めたようにそう呟いた。


「なら今すぐ手を引いて。私は今回、ガトー一味を暗殺するよう依頼を受けてる。このままだと再不斬とあなたまで殺してしまう」


「すみませんが…それは無理です」


「命が惜しくないのっ?出来ることなら私はあなた達を殺したくない。再不斬も向こうが退いてくれるならこっちだって下手に攻撃しないわ」

「………僕は再不斬さんに従うまでです」


やんわりとした拒絶。


―――…ここまで頑なに拒むのなら、これ以上言っても仕方なかった。



シュウはもう一度変化をし、リュウの姿になる。


そしてもと来た方向へ足を運ぼうとしたと同時に、最後にもう一度言った。



「…何でそこまで尽くす?」



もう一度首を捻って相手のほうを見たが、相手は悲しそうに微笑んだままだった。



その瞬間。


カカシと再不斬のいる辺りの場所で凄まじい爆発のような水音がした。



その音を聞いてリュウは急いでナルト達の元へと戻っていった。















「あ、リュウ!お前どこ行ってたんだってばよ!」

「悪りぃ、ちょっとな!つーか今何が起きてんだ?」


自分達下忍のいる足元にまで湖の水があることに些か疑問を感じ、そう尋ねた。


「スゲェーんだってばよ!カカシ先生が勝ってるんだってば!!」

興奮した面持ちで言うナルト。


見るとサスケやサクラ、タズナのおっさんまでもがそちらへと目を向け、その成り行きを見守っていた。


その視線の先には、未だ水面上で戦いを続けているカカシと再不斬の姿。


二人は全く同じ印を組み、何かの術を発動させようとするが何故か再不斬が一瞬動きを止める。

ババババッ

その間にもカカシは写輪眼で見極めた相手の術を発動させる為に素早く印を組む。


バッ!!


「【水遁・大爆布の術!!!】」



カカシの写輪眼が回転を始め、術が発動した。


「な…何ぃ?!(バカな!術をかけようとしたこの俺の方が…)」



ズゴゴゴゴゴ



巨大な水の竜巻が、再不斬に向かって押し寄せる。


「ぐああ…!!」

そのままその水の竜巻に飲み込まれる。

自分の術を自分で受けたことのショックと、あまりの水圧に再不斬は体勢を崩す。

凄まじい余波がリュウ達のほうへも襲い掛かってきた。

「グッ!」

「うわぁあ」

「(―――あンのバカっ、どうすんだよ。びしょ濡れになったじゃん…)」

流されないよう必死に踏ん張っている他の者達とは別に自分の上着の裾を摘み、口を尖らせるリュウ。




ドカッ




「ぐっ!」


そのまま波に流された再不斬は後ろにあった木に背をぶつけた。

前から来る水圧とぶつけた時の衝撃にかなりダメージを受け、その動きを止める。


が。


追い討ちとばかりに両手足にそれぞれ一本ずつクナイが突き刺さった。


「終わりだ…」



その木の上から、カカシがクナイを構えながら言った。


少しずつ周りの水も引いて、湖へと還っていく。


再不斬は眼だけをカカシへと向ける。その眼にあるのは驚きしかなかった。


「………何故だ…。お前には未来が見えるのか…!?」


「あぁ…」


カカシは殺気を込め、言った。



「お前は死ぬ」





その時。





シュシュッ


「!!!」


ザクザク




二本の千本が、再不斬の首に突き刺さった。



「「「「「!!」」」」」


全員が驚愕な顔をするが、リュウは千本が投げられてきた方向へと目を向ける。

ドサ…

眼を見開いたまま、その場に崩れ落ちる再不斬。



「フフ…」


近くの木の上から、小さな笑い声が聞こえてきた。




「本当だ、死んじゃったv」





見ると。





面をつけた何者かが再不斬を見下ろし、立っていた。











***“あとがき”という名の言い訳***

前半オリジナル、後半原作に戻った!編でした。
再不斬と白にシュウさんが初めて出会ったのはどっかの大名のお屋敷。
暗殺命令を下されてそこの住人を全員始末した後に同じ暗殺任務を受け持っていた再不斬と白に出くわしたのです。
まあ別々の里なんだからこんな事もあるよね☆みたいな感じで…。
さーて、戦いが終わったぞー!暫くはのほほんとした雰囲気で………という訳にもいかないかも(汗)
最強でお人好しなシュウさんにはいろいろとやる事などがあります!

頑張れシュウさん!!!ファイトーッ!


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あきゅろす。
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