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三日月の誘惑
二十三話



影で、支えて―――――――。







二十三話
‐秘策‐






「さーて、暴れるぜェ…」


真っ直ぐ敵の目を見据え、にっと笑うナルトにリュウも微笑を浮かべる。

ナルトの目からは絶対に勝つという意気がありありと満ち溢れていたからだ。


「クク…えらい鼻息だが、勝算はあるのか」

「!お前ら何やってる。逃げろって言ったろ!俺が捕まった時点でもう白黒ついてる。

俺達の任務はタズナさんを守ることだ!!それを忘れたのか?!」

(―――カカシ、黙ってな)

(正気か?!さっきより明らかにこいつの殺気が高い!死ぬぞっ?!)

(誰が死ぬか。それにナルトのやつ…面白い作戦を作ったかもしんねぇーよ)

(……っ?!)

語尾のほうは本当に面白そうな口調で言ったリュウに対してカカシは言葉に詰まった。


「おっちゃん………」


カカシの言葉で本来の任務を思い出したナルトが不安そうな表情でタズナを見つめる。


タズナは暫く沈黙を通した。その顔は下を俯いていた為、表情ははっきりと窺えない。



だが。



「……なぁに…」


その一言を始めとして、続けた。


「もとはといえばワシが蒔いたタネ。この期に及んで超命が惜しいなどとは言わんぞ。

すまなかったなお前ら……思う存分に闘ってくれ!」


「フン……という訳だ」

「覚悟はいいな…」

「満場一致!」

サスケ、ナルト、そしてリュウが言った。サクラもそんな三人の背を見て、強く頷き、タズナを護るようにクナイを構え直す。


「クッ…クックックック……」

突如笑い出す再不斬。

「ほんっとに!成長しねえな。いつまでも忍者ゴッコかよ。…俺ぁよ……」

ふいに笑うのをやめたかと思うと、スゥッと左手を上げてその手を見下ろす相手。


「お前らくらいの歳の頃にゃ、もうこの手を血で紅く染めてんだよ…」


殺気が一気に辺りの空気を巻き添えにし、肌をちくちくと刺激する。

ナルト達はその殺気に背筋を凍らせ、リュウは眉間に皺を寄せた。


「鬼人…再不斬っ」


カカシが言った。


「ほう…少しは聞いたことがあるようだな」


―――リュウも聞いたことがあった。

しかし、自分にとっては忌まわしいもの以外の何物でもなかった。


そんな中で、カカシは再不斬を睨みながら言葉を紡いでいく。


「その昔、“血霧の里”と呼ばれた霧隠れの里には忍者になるための最大の難関があった…」

「フン…。…あの卒業試験まで知ってるのか…」

「……あの卒業試験?」

カカシと再不斬の会話にナルトも入り込む。

「………クククッ」

「なんなんだってばよ、あの卒業試験って?」

「クックック」

いつまでも声を押し殺して笑う相手にしびれを切らしたか、ナルトは睨みつけるがそれにも微動だにせず自分の口調のペースで静かに言った。



「生徒同士の“殺し合い”だ」



ナルトが目を見開いたままその場で固まる。―――当然の反応だった。


同じ釜の飯を食った仲間同士が殺し合いをする。どちらかの命が尽きるまで………。

それまでお互いの夢を語り合い、助け合って、競い合った仲間だったのに、だ。

それが一変して殺し合いへと発展する。…死体がその場に山積みになるとも聞いたことがあった。



「だが10年前…霧隠れの卒業試験が大変革を遂げざるをえなくなる。



……その前年その変革のきっかけとなる悪鬼が現れたからだ……」


「変、革…?」

サクラが問う。

「変革って…?その悪鬼が何したっていうの?」

再不斬は無言を突き通す。その肩が僅かに震えている。

カカシが一呼吸間を置いて答えた。


「何の躊躇もなく…何の躊躇いもなく…まだ忍者の資格も得ていない幼い少年が、100人を超えるその年の受験者を…




喰らい尽くしたんだ…」





「楽しかったなぁ……アレは…」


ニィ…



歪んだ笑み。不気味な声。狂喜に満ちた目。



震えていたのは――――――…その時の快感を思い出していたからだったのだ。




チラ…とこちらへとその目を向けたかと思うと。



「!!!」



今までにない大きく強い殺気の波が押し寄せてきた。


「(っこいつ、これほどまでの殺気をまだ隠し持ってたのかっ……)」

下唇を噛み、理性を繋ぎ止めるリュウ。


「!」

その刹那、再不斬が目にも止まらぬ速さでサスケへと近づく気配を感じ、リュウは即座にサスケの腕を引っぱる。


シュッ


幸い、そのおかげでサスケは再不斬の攻撃に当たらずに済んだ。あれを喰らったらまず立っていられない。


「なめやがって!!」


再不斬が叫ぶと同時に、ナルトが両手を十字に構えて印を組む。


「【影分身の術!!!】」

ザザザ


ナルトの影分身が再不斬の周りを取り囲む。

「っ…影分身か。それもかなりの数だな…」

怒りを何とか抑え込み、冷静を取り戻してから周囲の状況を確認する。


影分身のナルト達はパシィッとクナイを取り出し、


「いくぜェ!!!」

ババババッ



一斉に再不斬へと飛び掛った。


「ウラァ!!!」

押さえ込まれた再不斬だったが、その巨大な刀を振り回すと一人残らず影分身達を弾き飛ばした。

その中の一人が背負っていた黒のリュックを肩から外し、その中に手を入れる。

そして何かを掴み取り、その何かをサスケへと投げる。


「サスケェ!!」

それを片手で受け取るサスケ。

「!!」

受け取った瞬間、サスケは何か違和感を感じてそれを凝視した。

「(…なるほど、そういうことかよナルト…お前にしちゃ上出来だ)」


身体を捻り、その勢いで片手に持っている何かをガチャッと開いた。



それの正体は―――――…組み立て式の巨大な手裏剣。



サスケは心を落ち着かせ、言った。


「風魔手裏剣、影風車!!!」


高く跳び上がり、手裏剣を再不斬に投げつけようとする。


「手裏剣なぞ俺には通用せんぞ!」

「(なーるほど、よく考えついたよ。ナルトは下忍の中でも想像力が豊かだね)」


リュウはすぐに今回の作戦がどんなものであるのかを分析し、感心した。



―――影分身はただの目くらまし。

本物のナルトは再不斬の注意がそちらに引きつけられている内に巨大手裏剣に変化して影分身の一人に持たせておく。

そしてサスケへとそのナルト自身が変化した巨大手裏剣を渡し、敵に向けて投げつけるように指示する。

サスケはあらかじめ持っていたもう一枚の同じ型の手裏剣をそれと重ねて投げる―――という作戦なのだ。


「(おっと、自分の役目がまだだった)」

自分の役目が何なのかを思い出す。



リュウの役目―――――それは…。



ブン!!


そうこうしている内に、サスケが再不斬へと手裏剣を投げた。


それは水分身の再不斬を狙うかと思われたがその水分身を素通りし、その先にいる本体へと…。


「なるほど、今度は本体を狙ってきたって訳か…。だがそんな遅い手裏剣っ…?!」


再不斬は目を見開く。その視線の先には、リュウ。


手裏剣越しから見える相手が、にっと笑った。



「風よ集え!」



手をかざし、作りあげた風をゴゥっと手裏剣へと放つ。

すると手裏剣はその追い風に駆り立てられ勢いをぐっと増した。


そのまま一目散に再不斬に向かっていく。



―――――リュウの役目は、手裏剣の速度を上げること。




「…っち!甘えっ!!」


再不斬は舌打ちをし、それを渾身の力を入れて受け止めた。


だが、その時に気づく。


「!!手裏剣の影に手裏剣が…!」



―――――…もう一枚の、手裏剣の存在に。



スゥ…と死角からきれいに離れ、真っ直ぐ再不斬の腹へと向かってくる。





「が―――――…、




やっぱり甘い!」





再不斬が水上を蹴って軽く跳んで避ける。手裏剣は掠ることなくそこから離れていく。

サクラは避けられたことに息を呑み、愕然とした。


だが、サスケとリュウはふっと口端を緩める。




ボン!!



「!?」





背後からの爆発音に、再不斬は驚いて振り返る。




現れたのはもちろん―――――ナルト。




左手にはしっかりとクナイを握り締めて、



「ラァ!!!」


シュ




迷うことなく、―――…投げた。



「!!」



再不斬はギリギリまで右手をカカシを捕らえた球体の中に入れていたが、


バシャ!


ついにその手を離し、クナイを避けた。


しかし最後までそれを渋っていた為、その頬にクナイが掠った。

傷は極めて浅いが、自分が傷付けられたことに怒りを覚える。しかもその相手が下忍なのだからなおさらその怒りと屈辱は大きい。


完全に我を忘れた再不斬。


受け止めていたほうの手裏剣をもの凄い勢いで回転させ、体勢を崩しているナルトに目掛けて投げようとする。だが―――…、




ガツッ!


「!!!」





手裏剣を、止められた。


止めたのは、カカシの手の甲。骨に刃が当たっているはずなのに、少しもそんな素振りを見せない。


ポタポタとその髪から水が滴り落ちる。


「………」

カカシの眼が、ゆっくり相手を見た。



その眼に込められていたのは、凄まじい殺気。



一瞬、再不斬が怯む。



「(ここはもうカカシに任せたほうがいいね………)」



リュウはその状況を遠巻きに見ていたが。



「(!)」



ふいに、誰かの気配を感じた。




澄みきったチャクラの気。それでいて、―――とても優しいその雰囲気。




「まさか…」


誰にも聞こえないくらいの小さな声を漏らす。




―――――不自然なことではなかった。“あの時も”再不斬の傍にいたのだから。



そしてある意味、リュウにとって恩人とも言えよう人物でもあるのだ。




(カカシ…ちょっとここは任せた)


(?…どうしたの?)


カカシはふと視線をリュウへと向ける。




だがその問いに相手は答えず、森の奥へと入っていった。










***“あとがき”という名の言い訳***

お、終わらなかった………っ!あー、早く戦い終わってくれ〜!!
…でも次回は戦いの場面そんなにないんですよね。白ちーが出てきます(また変な呼び方を;
疲れたのでちょっと戦いを省略したくて…。
だってシュウさんの出番があんまりないんですもん(ブリっ子すんな!
シュウさんが本気で戦えばこの戦いすぐ終わりますし。

次回もよろしくお願いしますね、シュウさん!!


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あきゅろす。
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