[携帯モード] [URL送信]

三日月の誘惑
二十二話



戦いで何を感じ、何を得る―――――――?







二十二話
‐木の葉流忍者‐







「…終わりだ」

陣の中に出現した再不斬。


それに即座に反応したのは、リュウとカカシ。


リュウは空に片手をかざし、風を手の平につくりあげてそれをナルト達の背に瞬時に当てる。

するとナルト達はその風で突き飛ばされ、前のめりになりながらそこから離れた。

ズギャ

同時に、カカシが再不斬の胸にクナイを深く刺す。


しかしその胸から流れ出たのは深紅な血ではなく、透明色の…水。


「(―――…水分身。本物は………)」

リュウがカカシの背後を見る。それとほぼ同じタイミングでナルトが指を差して叫ぶ。

「先生!!後ろ!!」

「!」

パシャ!!

クナイを刺した再不斬の身体が水へと還り、地面に音を立てて落ちる。

驚くカカシの背後から再不斬は刀を勢いよく横に振った。

ズバ


カカシの身体の上半身と下半身が一刀両断された。


「ギャ―――――!!」

本日2回目であるグロテスクなシーンを目の前にしてサクラが失神寸前の悲鳴を上げる。

だが、そのカカシの身体も水へと還り、地へ落ちた。


木の葉には影分身、霧には水分身があるように…それぞれの里の特性を活かした術は、そう容易には習得することは出来ない。


自分の術をいつの間にかコピーされていたことに驚きを隠しきれない再不斬に一瞬隙が出来た。

パシャ!

「動くな…」

その首に素早くクナイを突きつける、カカシ。


「終わりだ」

「!!!」

「ス…スッゲ―――!!!」

ナルト達はカカシの実力の凄さを目の前にしてそう声を張り上げる。



誰もが勝負がついたかと思った、が。



「……ククク、終わりだと………分かってねぇーな」

再不斬は首にクナイを突きつけられているというのに、笑みを浮かべる。そんな相手を怪訝な目で見るカカシ。

「…サルマネ如きじゃぁ…この俺様は倒せない。絶対にな」

「………」

「しかしやるじゃねぇーか!あの時既に……俺の“水分身の術”はコピーされてたって訳か……」

僅かに首を動かしてカカシに向かってそう言う。

「分身の方にいかにもらしい台詞を喋らせることで…俺の注意を完全にそっちに引きつけ本体は“霧隠れ”で隠れて俺の動きを窺ってたって寸法か」

「(…気づいてたのか。…やっぱり侮れない相手だな……ん?あれは…)」

リュウは目を細めて見る。


クナイが突きつけられた首筋から少しばかり見える、傷。


そこからは血の色の赤ではなく―――――…水の、透明色。


「!離れろ!!」

「え………?」

「けどな…」


リュウの叫び声も虚しく。




「俺もそう甘かぁねーんだよ」


「!!!」




カカシの背後で本物の再不斬が、現れた。




「そいつも水分身―――――!!?」

ブン

地面に平行して再び刀を振る再不斬だが、カカシは瞬時に身体を伏せたため、刀は意味を成さず空を薙いだ。

ガッ!

だがそのまま空を薙いだ刀を地面へと突き刺し、腕の軸を変えたかと思うと…


「!!」

ドゴッ


足に回転を利かせてカカシの腹に蹴りを入れた。


そのまま勢いよく飛ばされるカカシ。


ザザッ

「!!」


今がチャンスだとばかりに駆け出そうとした再不斬だったが、その足元にはカカシが投げたまきびしが。


「…くだらねぇ」

ザブーン!

再不斬が呟いたと同時に、カカシは近くの湖に落ちる。

「せんせ―――!!」

ナルトが叫ぶ。サクラもサスケも突然形勢逆転され驚愕していた。


「(?!ヤバいっ…!)早くその湖から出ろ!!」


湖の異変に気づいたリュウ。


ザバァ…

「!(な、何だこの水…やけに重いぞ)」


水から出ようとしたカカシがようやく異変に気づく。

いくら忍服を着ているとしても、この重さは尋常ではなかった。


「フン…バカが」

スッ

再不斬が素早く何かの印を組む。


「(…しまった!!)」


「【水牢の術】」

ゴウ

「!!!」

周りの水が襲いかかり、カカシを巻き込んで大きな球体となる。


「ククク…ハマったな。脱出不可能の特製牢獄だ!!!」


球体の中に片手を突っ込み、その手からチャクラを流し込んで術を持続させる再不斬。

「お前に動かれるとやりにくいんでな」

そう言うと、他の下忍達と一緒に庇うようにタズナの前に立つリュウへと視線を移す。


「さてと…カカシ、お前との決着は後だ。來夜…“あの時”の勝負をつけようぜ」

「だから人違いだと言ってるだろー!」

あくまでも否定をするリュウ。

「まだそんなことぬかしてやがんのか…。―――だったら俺様にも考えがあるぜ!!」

にやりと笑ったかと思うと、片手で再び印を組む。

ズズズ…

すると突如ナルトの近くに再不斬の水分身が現れ、ナルトの顔面へと蹴りを入れようとした。

「!」

「…ちっ」

リュウは小さく舌打ちをすると目にも留まらぬ速さでその間に駆け寄り、ナルトに覆い被さる。


「くっ…ぅ!!」

ザザザ…

「ナルト!リュウ君!!」

リュウの苦しそうな顔にサクラが悲鳴を上げる。


ナルトと共にリュウは数メートル先まで飛ばされた。だが、再不斬は渋い顔を浮かべる。


「(…ガキを攻撃すれば庇うとは思ったが…今のは何だっ…?)」


今の蹴りは水分身ではあるが、殺傷威力はかなり高かったはず。

少なくとも骨にひびを入れられるほどの力はあるはずなのに、その感触が全くなかった。


―――…相手に、自分の蹴りは入っていなかったのだ。


再不斬が相手を見ると、苦痛に歪めていた顔がほんの一瞬自分に向けて微笑んだ。


(悪いけどお前と戦うつもりはないし、この子達を傷付けるわけにもいかないんでね)

(なめた真似しやがって…!)

リュウの裏の会話に、唸る再不斬。


先程の攻撃で落ちたナルトの額あてを見下ろし、それをガッと踏みつける。

それは苛立ちや怒りから来る―――やつ当たりだった。


「お前らァ!!タズナさんを連れて早く逃げるんだ!!こいつとやっても勝ち目はない!!俺を水牢に閉じ込めてる限りこいつはここから動けない!」

リュウに蹴りが入ったと思ったカカシがそう叫ぶ。

「水分身も本体からある程度離れれば使えないはずだ!!とにかく今は逃げろ!」
(頼む!ナルト達と一緒に逃げて、あいつらを安全な場所へ避難させてくれ!)


リュウにそう言う裏の言葉。それを黙って聞いていた相手だったが…。


(―――――嫌だ、といったら?)

(はっ?何言っちゃってんの?!ナルト達にこいつの相手は無理だ!!!!)

相手のその否定的な言葉に思わず耳を疑うカカシ。


カカシの言う通り、ナルトは再不斬の力量が予想以上に上だったためにその場に座り込んだまま恐怖の色をその瞳に宿していた。


初めての実戦、初めての死への直面に動揺を隠せないのは当然だった。


リュウはナルトの様子を見た後、カカシへと視線を戻す。



(カカシ…お前今回の任務で里出る前に何て言った?)

(…え?)

逆に質問され意味が分からないカカシ。リュウは倒れていた身体を起こし、そんな相手を見つめる。


(“お前はナルト達と同様、もう俺の部下だから”って言ったじゃん………




上司見捨てて逃げる部下がどこにいるんだよ)




(!!)

カカシは唖然とする。

(目の前に助けられる相手がいるのに、そんな腰抜けなことができるか。そーいうのって大嫌いなんだよ!)

リュウの有無を言わさないかのようなその強い口調。かと思うと、急に口調を和らげる。


(―――…“ナルト達と一緒に”助けてやるよ、上司さん)




その時。




ナルトはあまりの恐怖と相手の殺気に地面へと手をつき、その場から離れようとしていた。

ズキ…

だが、左手に鈍い痛みが走り…体勢を崩してしまう。そんな左手をじっと見下ろした。



「この左手の痛みに誓うんだってばよ…!」

自分の言葉を思い出す。


「ナルト、卒業…おめでとう」

イルカ先生の言葉を思い出す。


「ごーかっくv」

カカシ先生の言葉を思い出す。


そして最後に。


「立派な木の葉の忍だ」

暗部の來夜ねーちゃんの言葉を思い出した。



「(っそうだ…オレってば忍者になった。それにもう逃げねェって決めただろ!)」

ナルトはゆっくりと立ち上がった。


瞳にはまだ恐怖の色が見え隠れしていたが、さっきとはまったく違う強いそのまなざし。


ダッ!


大地を蹴って、駆け出していく。


「うおおおお!!!」

「バ…バカよせ!」

「あいつ…」

「あ!ナルトォ!!何考えてんのよ!」


突然のナルトの行動にカカシを始めとし、サスケ、サクラが声を出す。


「フン…バカが。てめぇに用はねぇー」


ドカ


今度こそナルトの腹に、蹴りが入った。


「「「「「!!」」」」」


ナルトの身体がふっ飛び、全員がその光景に目を見張る。―――…再不斬も、その例外ではなかった。


「(あいつ…!ガキを傷付けるわけにはいかねえとか抜かしながらっ?!)」


今度も庇いに来ると思っていた。しかし、その庇いに来るであろう相手は少しも動こうとしなかったのだ。


リュウの方に目を向ける。相手はその視線に気づくと、妖艶に笑い、言った。



(ナルトはお前なんかに負けないよ、絶対に。今のもそうだ)

(!!何だとてめぇっ!)


リュウのその言葉に怒りを露わにする再不斬。

まるで自分を下忍達の腕試しに使うようなその挑発した口調。

再不斬には屈辱以外の他でもなかった。


「一人で突っ込んで何考えてんのよ!いくらいきがったって下忍の私達に勝ち目なんてあるわけっ…」

サクラが言葉を区切る。ナルトはぐぐっとその上体を起こしていく。


(―――お前の足元…見てみな)

(っ?!!)



見ると、踏みつけていたはずの額あてが―――――…なくなっていた。




「ぐっ…」


呻きながら、確実にその身体を起こすナルト。




その左手には、額あて。




「おい…そこのマユ無し」


癇に障ったのか、ピクッと反応する相手。


「お前の手配書に新しく載せとけ!いずれ木の葉隠れの火影になる男…」


スゥ…


清々しいくらい、胸をはって。誇らしげに、額あてを持ち上げて。



ギュッ!!




「木の葉流忍者!うずまきナルトってな!!」






強く、強く―――――その額へと結びつけた。





「(…よし、闘争心が湧いてきたね)」


満足気にそう思うリュウ。このためにナルトを再不斬の元へ黙って行かせたのだ。


―――地面に身体が擦れる衝撃は何気に自分がつくり出した風で和らげていた。

それに…再不斬が自分がまた庇いに来ると思って強く力を入れていないことも予想していたのだ。


「サスケ!リュウ!ちょっと耳貸せ」

「何だ」

「作戦がある」

「なになに、どんな作戦?」

リュウはナルトの方を興味深々で見る。



…正直、この状況下でナルトが作戦を練るなんて考えてもいなかった。

普通なら混乱しきってそんなこと考えること余裕などない。まして下忍で実戦経験が少ないにも関わらずに、だ。


さっきまでとは想像がつかないくらい頼もしく感じるナルトに、サクラもほんのり頬を染めている。


「フン、あのお前がチームワークかよ…」

そう口では言いながら、最悪の状況下の中で咄嗟に作戦を練ったナルトに驚きを隠せないでいるサスケ。


「さーて」


ナルトは口端の血を拭う。





「暴れるぜェ…」




その言葉が、一際大きく耳に届いた。










***“あとがき”という名の言い訳***

なっがいですねー…。次回で終わってくれるかなー?(不安;
戦いの連続でもう混乱しまくりです。
話をもう少し短くまとめられたらどんなにいいかっ…!OkL
くっ…無念……。

それではシュウさん、ここまで読んでいただきありがとうございました!!


[前へ][次へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!