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名前変換無極短小説 ※狂・グロ・微裏…含有※ shortの小ネタになるので内容が被ることがあります
2011-07-10(日)
レッドさんがミュウを拾う

※ミュウが人間の女の子の姿12さいくらい
※僕レッドさん
※山もなければおちもない















女の子を拾った。
白い世界でボロボロの姿で横たわる女の子。
吹雪のなか、一糸まとわぬ姿。
半分雪に埋もれた体をかきだすと、唇はピンク色だった。
未発達な胸に指を這わせると音はしなかった。
死んでいる。
初めてみた死体は綺麗で、あどけなかった。

だから怖くなかったのかな。

僕は女の子を抱き上げて洞窟に持ち帰った。
傷口を拭いてあげて、僕の服を着せてあげた。
リザードンの炎で程よく暖まった洞窟で、僕はそっと女の子の髪を梳いた。

女の子の髪は桜いろだった。



不思議だなと思ったのは、抱き上げる前にみた唇のいろ。
それと、抱き上げたときのやわらかさ。


死んでないでしょ、と呟いた。
久しぶりにきいた自分の声と、喉が震えた感覚に思考がぶれた。


パチリと開いた女の子の瞳は丸くて大きくて、旅立つ日にみたマサラの青空みたいな薄い青いろだ。
僕は久しぶりに、驚いた。
死んでる事実に死んでないと思い、死んでないと思って呟いたはずなのに生きた女の子に驚く、そんな自分に。


「……、君、は?」


少しかすれた僕の声。
女の子は丸く大きな瞳でじっと僕を見つめた。
ピンク色の唇が艶をます。


「わたしは、ミュウ」




女の子を拾った。
女の子はミュウだった。
ミュウは女の子だった。
ミュウは種族名だけど個体数は1で、それはつまりミュウは種族名であり女の子の名前でもあった。


ミュウはつよいポケモンに酷く体を痛めつけられ、必死でテレポートしてきたらしい。
ミュウはポケモンの姿に戻ることなく、ずっと僕の後ろをついてまわった。
ミュウは正にポケモンで、そして僕より優秀な人間だった。


「れっどはひとりぼっち?ミュウと同じ?」


僕はそれに答えなかった。
多分、違うから。
ミュウ以外にミュウはいない。
でも僕以外に人間は沢山いる。


ミュウはひとつだけど僕はひとりじゃない、と思う。
酷く朧気な思考は、口に出すことを拒絶した。


ミュウは答えなかった僕の後ろを見て、小さく鼻を鳴らした。


「じゃあミュウはいくね」


初めて笑った女の子の体がフワッと浮いた。
思わず白い手を掴む。
少し僕よりぬくい手。


「れっどありがとう。ばいばい」







なくなった温もりに、やっとこの世界の寒さを感じられた。
僕もミュウみたいにひとりぼっちだったら良かったのに。





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