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名前変換無極短小説 ※狂・グロ・微裏…含有※ shortの小ネタになるので内容が被ることがあります
2011-06-20(月)
吸血鬼と没落貴族の娘(雲雀)



「アレをよこしなよ」


嵐の昼、薄暗がりの中ろうそくに火を灯してキッチンに至る廊下を歩いているとバサッと言う音とともに目の前に鋭利な刃物を思わせる雰囲気を持った端正な男がいきなり現れた。彼女はパチパチと目を瞬かせると苦笑してどうぞと彼を誘導していく。彼の名前は吸血鬼雲雀恭弥。そして雲雀を誘導する彼女は没落貴族の娘だった。


「本当に好きですねぇ…」


ボトルから赤い液体をグラスにゆっくり注いで雲雀に渡す。雲雀は顔こそ険しいもののどこか嬉しそうにしていた。辺りに漂う芳醇な香りに隠していた牙が露わになる。彼女はそんな雲雀を見て『吸血鬼なんだなぁ』と呑気に考えていた。


「君を生かしてるのはこれのためだけなんだからね」


「えぇ、ありがとうございます…」


雲雀が液体を口に含む。程よいコクとまろやかさは彼女にしか作れない事を知っている雲雀は貧乏な彼女を養っている。


「……君のこれだけは手放しで誉めてあげるよ」


素直に美味しいと言われて彼女はにっこりと微笑んだ。美しい吸血鬼の笑みを見るためなら肉体に無理を強いてでも差し出す価値はある。


「栄養満点ですから」


「だろうね。他の人間じゃこうはいかない。また来るよ」


バサッと言う音とともに雲雀は姿を消した。彼女は貴族の娘らしからぬ荒れた手をさすりながら窓から嵐の中の庭を見やる。彼の下部たちの手で頑丈に守られたビニールハウスの中でたわわに実る赤いトマトたちが今期の収穫を待ちわびていた。









赤い液体=トマトジュース





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