そら様からのリクエスト
『柔勝で、坊の天然に振り回される柔兄(糖分多め)』
糖分多めかは謎ですが、とりあえず天然炸裂させてみましたww
日が近かったので1123(いいにいさん)の日も絡めてみました。
柔造と中学生坊です。
ではどうぞ!
●感謝します!●
≪勝呂side≫
朝、ジョギングから帰ってきてテレビを見ると
『今日は勤労感謝の日ですねぇ!』
なんてアナウンサーが言っていた。
『1123でいいにいさん(良い兄さん)なんて言う語呂合わせもあるそうですよ!』
(ふーん・・・・)
ペットボトルの水を飲みながらそんな話を聞いて、『良い兄さん』かぁと考える。
(やっぱ『良い兄さん』言うたら柔造やろなぁ)
(勤労感謝の日って事は、働いてる人を労わなアカンのやろし、そんで『良い兄さん』の日って事は・・・・)
「せや!」
ごくりと最後まで水を飲みきると良い事を思い付いた。
(いつも世話になってるし、今日は柔造を労ったろ!)
そう思い立って、直ぐに俺は行動に出たのだった。
**
柔造の起床時間は確か6時。
今は丁度6時。
もう起きてるやろか?
まだ寝てるやろか?
取り合えず柔造の部屋へと行ってみる。
とんとんと軽く襖をノックして、そぉっと部屋に入ってみるとまだ部屋の中は暗く、布団の中に寝ている柔造の姿があった。
(よし!起こしたろ!)
そう思い、枕元でそっと名を呼んでみる。
「柔造・・・柔造・・・」
「ん・・・・」
「朝やで・・・起きて」
「ん・・・・もう・・・?」
「おん。せやから起きて」
「ん・・・ぼ・・・ん・・おはようございます・・・・って・・・ええ!!!」
最初は薄目がちに目を開けたかと思うと、俺の姿を確認したらがばっと跳ね起きた。
「え?!坊!!!なんでこないなとこに居ますんや!」
「おはようさん。柔造起こしたろ思て」
「え?!なんで?!」
「なんでもええやん」
「え?え?」
「先に着替えんの?」
「え・・・はいって・・・え?」
「服どこ?」
「そこの箪笥にかかって・・・って・・・・え?」
「ここ?」
「はい、そうですけど・・・・って、坊?」
「んー?」
「何してはるんですか?」
指刺された箪笥を開けて、いつもの装束を取り出してやる。
「何って、朝の準備」
「いや・・・えっと・・なんで?」
「せやから、なんでもええやん」
「そんなんようないです!」
「ええの!」
「坊!!」
柔造は立ち上がり、俺の肩をぐいと掴んだ。
それから俺のが手に持っている服を取り上げると、
「何でそないな事するんや知りませんけど、朝の支度は自分でしますよって」
そう言った。
まぁ、朝、食卓に来るまでどないな風に準備してやなんてそないに詳しく知ってるわけやないし、ここは引いておこう。
ほんなら・・・・
「朝は何食べるん?パン?ご飯?」
「えっと・・・・パン・・・・が今日は食べたいですけど・・・って、坊?」
「ほんなら分かった!用意しとくから来てな!」
「え???坊???」
「食パン1枚?2枚?」
「2枚・・・ですかねぇ・・・って、坊!せやからなんですのん!!!」
「なんでもええやんって言ってるやん!ほな焼いとくから来てな」
「え!!ちょ!!!坊!!!」
なんや後ろで呼び止める声がするけれど、構わず食事部屋へと向かって柔造の朝食の準備をした。
食パン焼いて、コーヒーも淹れて、あと・・・サラダとかってあったっけ?
あ、ちゃんと置いてある。
ほんならこれも用意して、よし、出来上がり!
並べたと同時に、柔造がきちんと着替えてだだだっと、部屋へと駆け込んできた。
「坊!!!」
「めっさ早いな。今並べたとこや。冷めんうちに食べなぁ」
「おおきに・・・って!せやから!!」
「なに?」
「ありがたいですけど、そんなん自分でしますよって!!!」
「ええやん、たまには」
「せやけど!!」
「俺がこんなんしたら嫌?」
あまりにも柔造が俺の行動を嫌がるから、じっと目を見て聞いてみた。
たまには柔造の役に立ちたいのに。
「・・・っ!!!!そ・・・そんなんっ!!」
「止めといた方がええ?」
「いえ・・・あの・・・嬉しい・・・ですよ?」
「そうか!!!ほんなら早よ食べや」
「は・・・はい・・・」
良かった。ほんなら今日1日やっぱり予定通りに行動しよう。
柔造が席に着いて食べてる目の前に座って、俺も牛乳飲みながら座る。
「朝は出張所まで送ってたるからな」
ブフッ!
柔造が飲んでたコーヒー吹き出した。
「わ!何してんねん!!俺、何もオモロイ事言うてないで?何で吹くねん!」
側にあったフキンを手渡してやる。
「す・・すんませんっ!!せやかて・・・ホンマなんですのん?」
「ええやん。嫌か?」
「せやからっ!!嫌やないですけど!!」
「ほんならええやん。いちいち煩いで?」
「・・・はい・・・」
あんま嬉しないんかなぁ?
せやけど、他に労うってどないするかわからんしなぁ。
取り合えず世話みたることしか思いつかんし。
慣れへんから恥ずかしいんかな?
ほんなら恥ずかしくなくなるくらい色んなことやったろ!
そう思って夜までの色んなプランを頭の中で構想した。
朝ごはんを食べて、柔造の荷物を持ってやって、虎屋の側にある出張所まで送って行ってやる。
「気ぃつけてな」
「はい・・・おおきに。ほんなら行ってきますよって」
「おん。あ、せや」
「はい?」
「夜も迎えに来たるな」
「えっ!!えっ?!」
「何時に終わるん?」
「いや・・・それは・・・時間とか大体でしか分かりませんし・・・」
「ほんなら終わりそうになったらメールか電話して?」
「え!!せやけど!!」
「ほんなら行ってらっしゃい!また来るわなぁ」
柔造がまたなんや言い返さんうちに、早々にその場から立ち去った。
さ、家帰ったら夜までは勉強でもしとこ。
≪柔造side≫
朝、なんや声がするからゆっくりと目を開ければそこには坊が居た。
「起きて」
坊の姿を確認して慌てて飛び起きる。
何でこんなところに坊が居てるんやっ?!
しかもこないに朝早うに!!
え?もしかして、寝惚けて思い余って連れ込んだとか?!
嘘や!!
まさか、そんなわけないはずやけど、もしそうやったらどうしよう!!
「え?!坊!!!なんでこないなとこに居ますんや!」
「おはようさん。柔造起こしたろ思て」
あ・・・・そうなんや・・・、どうやら違うかったらしい、とほっと胸を撫で下ろす。
せやけど、ほっとしたのも束の間。
なにやら今度は俺の箪笥をごそごそし始めた。
え?!一体何をしてはるん?!
「何って、朝の準備」
え?え?え?なんで?!
一体何が起こってるんや?!
一瞬呆然として、はっ!と立ち上がり坊の手を止めた。
そんなんさせたらアカンやろっ!
「何でそないな事するんや知りませんけど、朝の支度は自分でしますよって」
そう言うと、一瞬坊がしゅんとした顔をした。
しまった!!!
悲しませてしまった!!
せやけど、こればっかりは!
と思っていると、たちまち表情は元に戻り、
「朝は何食べるん?パン?ご飯?」
と聞いてきた。
「えっと・・・・パン・・・・が今日は食べたいですけど・・・って、坊?」
「ほんなら分かった!用意しとくから来てな!」
え?まさか、まさか!!!
聞くだけの事を聞くと坊は俺の部屋から出て行った。
呼び止めても振り向きもしない。
アカン!
こんなん悠長に着替えてる場合やないっ!
だだっと、部屋を出て取り合えず顔を洗い、歯も磨いて、髪もなんとなくセットして、もう一度部屋に戻って疾風の如き速さで服を纏う。
それから食事部屋へとこれでもかと疾走した。
「坊!!!」
「めっさ早いな。今並べたとこや。冷めんうちに食べなぁ」
遅かった!!!
既に食卓には坊が焼いたであろうトーストと、淹れたてのコーヒー。
サラダは多分朝用意されていたものを配膳しただけであろうが、坊に朝食の準備をさせてしまうやなんて!!!
「いや・・・・ありがたいですけど、そんなん自分でしますよって!!!」
「ええやん、たまには」
「せやけど!!」
「俺がこんなんしたら嫌?」
そう言って、困ったような悲しいような表情で俺を見やる。
そんなん、嫌なわけなんてない。
むしろそりゃ坊が俺の為にってやってくれはるのは嬉しくて、嬉しくて仕方ないけれど。
「いえ・・・あの・・・嬉しい・・・ですよ?」
「そうか!!!ほんなら早よたべや」
そう応えると、坊の表情はまたも一変してぱぁっと明るくなった。
ああ、なんや朝から眩しい、その笑顔。
それから俺の前にでコニコとしながら座り、俺が食べるのをじっと見ていた。
ホンマに今日は朝から何が起こってるんや?
そりゃこんなん、思い描いていた節はあるけれど。
坊に朝起こしてもらったり、朝食用意してもらったり、行ってらっしゃいのちゅーしてもらったりやとか・・・。
けどそんなんは俺の妄想の範疇でしかないはずやのに。
一体何がどうなってるんや?
黙々とそんなことを考えながらパンを頬張り、コーヒーを飲んでいると坊がこう言った。
「朝は出張所まで送ってたるからな」
ブフッ!!
な?!なんやて?!
「わ!何してんねん!!俺、何もオモロイ事言うてないで?何で吹くねん!」
わ!コーヒーがあっちこっちに飛んだ!!
しまった!
ってか、ホンマ一体何事なんやっ!
「す・・すんませんっ!!せやかて・・・ホンマなんですのん?」
「ええやん。嫌か?」
「せやからっ!!嫌やないですけど!!」
「ほんならええやん。いちいち煩いで?」
「・・・はい・・・」
アカンは・・・。
これ以上なんや言うたら逆に坊の機嫌を損ねてしまう。
しゃぁない、ここは甘んじて受けておこう。
そして、出張所まで送ってもらい、ほっと一息と思いきや、
「夜も迎えに来たるな」
と、にこりの満面の笑み。
「えっ!!えっ?!」
ホンマ何が一体どうなってるんやっ?!
それから、有無を言わさず約束を取り付けられ、坊は逃げるように去ってしまった。
そのまま立ち尽くして呆然とする。
今日はなんや?
最高のラッキーデーなんか?
それとも、これは夢なんか?
一体何が起こってるんや?
わからん・・・・
分からんけど・・・
坊が俺のためになんやしようとしてくれてるらしいって言うのは分かった。
せやったら、ここはやっぱり坊の好意を素直に受けとくべきなんやろ。
ふぅと肩で息を吐いて、呼吸を整え、俺は出張所の門を潜った。
この時、これが天国のような地獄の幕開けやんて知る由もなかった。
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