『まったく貴様は、あっちへふらふらこっちへふらふらと…少しは落ち着かんか!』
狭い村の中を探索と称してふらふらと行き来するアドニスを黙って見ていたキーファだったが、途中で堪えられずに溜め息混じりに諌めた。
確かに探索や情報収集は冒険の基本だ。しかし、キーファから見てアドニスの行動は無駄としか思えなかった。
『見ているこちらが疲れる。そもそも、そんなことだからいつもいつも面倒ごとに巻き込まれるのだ』
「僕のことよく見てるね、キーファ」
まるで見当違いな返答に、キーファはがくりと肩を落とす。会話をしろ、会話を!
『当たり前だ!他に見るものが無いのだ、吾輩には!』
「でも見てるってことは、僕が気になるってことだろ」
アドニスはその場にしゃがみ込んで、地面に生えている雑草をむしりながら告げた。
四六時中共に居るのだから、キーファの理屈はもっともなものだ。しかし“見ない”という選択肢だってある、というのがアドニスの言い分だ。どうせ何が起ころうと今のキーファには手出しは出来ないのだ。口出しならいくらでも出来るが。
『フン。自意識過剰にも程があるな』
「またまた照れちゃって。よし、たまには素直になってみようか」
『…何の話だ?』
また違う話になったのか?とキーファが訝しげに眉を寄せるのを見て、アドニスは口角を僅かに上げた。そして徐に立ち上がると、両手を頬に添え大きく息を吸い込んだ。
「僕はキーファが大好きだー!」
『んなっ…!?』
誰も居ない方向に向かって突如叫び出したアドニスを、驚いた村人は奇異の目で見つめる。
それに慌てたのは見られたアドニスではなく、キーファだった。
『な、な、何を言っとるか貴様ァァァ!!』
「ツンデレなとこも寂しがり屋なとこもちょっとおバカなところも全部好きだー!いつもありがとうー!!」
『イヤァァァツンデレとか言うなーー!!』
顔を真っ赤にしてなんとか止めようとする。しかし、肉体の無いキーファに出来るのは精々口で止めるくらいだ。いくら喚いても、アドニスはそ知らぬ顔でキーファへの愛(?)を叫び続けた。
一通り叫び満足したのかアドニスが一息ついて振り向くと、キーファはぐったりとしながら両手で顔を覆っていた。
『な、何なのだアドニス貴様…気でも違えたか…!?』
「お手本」
『はい?』
「さ、お前もやってみなさい」
“たまには素直になる。”
先程アドニスが言ったことだが、それを実践したらしい。
爽やかに笑みながら促すアドニスを、口をぽかんと開けたままキーファは見つめた。
『だっ…』
信じられん。
わけがわからんこの男。
…今に始まったことじゃないけども!
『誰がやるかこのアンポンタンがーー!!!』
「どうせ僕しか聞こえないって」
『そういう問題じゃねええええ!!』
アドニスよりも大声で喚き散らすキーファの声は、宿屋で休息を取っていた仲間たちのもとへも届いたのだった。
End.
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梓狂様からのリク、『アドニスとキーファ』でした。
振り回してみました(笑) CPではなく+です。多分。
梓狂様のみお持ち帰り自由です。リクありがとうございました!
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